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2024/09/23

『クイーン!居るんでしょう、開けてください!クイーン!』
 ドアに背中を押しつけて、ずるずると座り込みながら、クイーンは言う。
「RD」
[何です?]
「キャビンのドアをしばらくロックしてくれ。ジョーカー君には悪いけど、鍵だけじゃ心許なくてね」
[……いいんですか?]
 ドン、と強く扉を叩く音に混じって、クイーン、とまた呼ぶ声がした。
 振動として伝わったその衝撃を背中で感じながら、片膝を立てて座り込んだクイーンは苦笑する。
「今この戸が開いたら、私は彼に何をするか解らないよ」
[ですが……]
 ドアの外で、RD、と呼ぶ声がする。
「頼むよ、RD」
[……解りました。ロックします]
 音一つ無く、キャビンのドアにロックがかかる。ドアの感触でジョーカーもそれに気付いたのか、扉を叩く音が強くなった。
『クイーン……ッ』
「入って来ちゃ駄目だよ、ジョーカー君」
『何故ですか』
「今君にあったら、私はきっと君を驚かせるし、失望させるよ」
 それが何だって言うんですか、扉の外の声は言う。
『あなたは常日頃から僕が驚くようなことや、失望するようなことをしているじゃないですか』
 何を今更、という調子の声に、クイーンは苦笑する。
「そうじゃないんだよ。……そうじゃないんだ」
『……何があったんですか?』
 少しだけ感情の滲んだ声に、クイーンは困ったように小さく声を上げて笑う。
「何でもないよ」
 ただ君が愛おしくてしょうがないだけ。

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「旦那ぁー、泊めてくれよー」
 ガチャリ。
 ヴォルフは扉を閉めた。
 ついでに記憶の扉も閉めて、今見たものを全部見なかったことにしてしまいたかった。
 だが、無情にもチャイムはピポピポピンポン、と鳴り続ける。しかも連打だ。
「何で俺が泊めなきゃならないんだ!」
 部屋の外に向かって怒鳴ると、外から困ったような、情けない声が返ってくる。
「探偵卿クビになった所為で、ホテル追い出されちまってさ。行くところ無いんだよー。な、旦那、パートナーの誼で!頼む!このとーり!泊めて!」
 この通り、と言われても、覗き穴の付いていないドアから外が見えるわけもない。仕方なくヴォルフは、ドアチェーンを掛けてから細く扉を開ける。例えチェーンが無くとも、仙太郎がドアをこじ開けようとしたところでそれを阻止する腕力を持っている自信はあるが、どうにもこの若者は油断がならない。

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