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2024/09/23

 さて、幾つもの尊い犠牲を出し、地上に数多の傷跡を残した大戦が終わった後、何が変わったのかと言ったら――結局何も、変わらなかった。
 いや、変わったことは変わったのだろう。
 今まで絶たれた世界であった天界と地上は平和を誓い、新しい神が生まれた。
 けれどそれがサイアスの生活に何かしらの影響を及ぼしたかといったら、そんなことはまるでなかった。
 戦争の傷跡は日々の営みの前にあっという間に消え去り、人々はまたかつてと同じ生活を送っている。サイアスも戦争で少しばかり名前に箔が付いたり、奇妙な因縁が出来たり、或いはこの少し特別な体質が世間に広まったりもした。だが、増えた肩書きは平和な世の中では使い道がないものだし、天界と地上の交流は相変わらずないし、サイアスの出生に関するあれこれも、興味本位で一年くらい騒がれた後はすっかり落ち着いてしまった。
 だから時々、あれは夢だったか、もう覚えている人も居ないくらい昔のことになってしまったのではないかと錯覚しそうになる。
 それでも、光の戦士達が天界から授かったという聖杯は確かに中央に保管されており、皇帝陛下の魔導の師の席はぽっかり空いたままだ。
 けれど逆に言えば、それくらいしかもう、戦争があった、と示すものはなくなってしまった。
 そんなもんでしょうか、とサイアスは以前人に問うたことがある。数少ない、彼より年上の一人は、笑ってそんなもんだ、と言った。
「はじまる前と終わった後は、案外なんも変わらんもんだ。変わるのは眼に見えないものだけで、見えるものは殆ど変わらん。変わったように見えても、驚くほどすぐ戻る。戦争で変わるものより、時間が経つにつれ変わる物の方がよっぽど多いぞ」
 そりゃ貴方が長生きだからでしょう、と突っ込もうかとも思ったけれど、人のことを言えた身分でもないので、その時は言わなかった。
 そう言った彼も、戦いに駆り出されて以来、復興の手伝いやら何やらでしばらくは忙しかったようだが、少し前からまた以前のように研究に専念する生活に戻ったようだ。時間は人を変えると言ったが、時間も戦争も彼等の生活スタイルを完全に変えてしまうことはないらしい。
 サイアスは彼等と違って一度しか大きな戦争を知らないので、彼が言うことが正しいのかどうなのか、変わらないことが普通なのか彼等がマイペースすぎるのかは判らない。判らないけれど、島は相変わらず空に浮かんだままで、サイアスは飛翔の間の鍵持ち――つまりは公爵を務め続けなければならないし、副官はカレンのままで、彼女につつかれながら仕事をしている。

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 悲しいこと、酷いことは、忘れたふりして生きてゆく人々と。




 3章で一つ心配なのが、光の戦士が地上へ戻ってきたかきていないのかが書かれていないことです。
 や…………タイガ・ショウ・シズクは戻ってきていそうなんですが、リュウガさんがねぇ……
 どうなんだろうなぁ。でも全員「新しい神の誕生」という記述があった気がするので、天界に残ってしまっても不思議ではないかなぁとか…………でも地上では待ってる人もいるし、戻ってきてくれる……と……

 一応今回の話ではショウ坊ちゃまは戻ってきている設定で。戻ってこなかったらサイアスさんの生活は結構変わってしまうと思う。
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2009/03/25
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