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2024/09/23
 雲間

 その男は、最前からずっとそうして、足下の岩盤が無くなった先を――下界に続く中空を――見下ろしていた。いくら見つめたところで神ではなく、透視の力すら持たぬ彼に地上が見えるはずもないのだが、男はゼロニクスがやってきたと気付いてもなお、そうして地上があるはずの場所を見つめている。
「――本当に下界に降りるつもりか?」
 ぽつりと問うたゼロニクスに、男はただ淡々と答える。
「他に行くところもない。此処に長居は出来ぬからな」
 まだ箱の封印が解かれたと知れ渡ってはいない今だからこそ、こうして悠長に話などしていられるが、ひとたび追っ手が掛かれば、追われる身となる男やその眷属は天界には居られない。
「……もう一度訊くが、」
 こちらに視線を向けもしない男に、ゼロニクスは問う。
「俺と共に行く気はないか」
 問いの形を借りてはいたが、それは質問ではなく確認だった。男は雲しか見えないであろう中空へと視線を据えたまま、僅かにだけ眼を細める。やがて、口端を吊り上げる笑い方で――その間さえ男はゼロニクスへ視線を向けはしなかったが――笑って、言った。
「私などを頼るようでは、その名が廃ろう、無頼神よ」
「お前は将だと聞いている。お前のような者がいれば心強い」
「私のような者、がいれば、な」
 皮肉を含んだ笑いを浮かべたまま、男は今度こそゼロニクスを見た。青い視線が交錯する。
 ゼロニクスの言葉は本心で、けれど男が言ったことも本当だった。この男のような力と才を持った者が必要だったが、それは別にこの男でなくとも良いのだった。もちろん、ゼロニクスの目的が彼等を新世界へ導くことである以上、数は多いに越したことはないのだが。
 おそらくは、これ以上は何を言ってもこの男の意志は動くまい。思いながらも、ゼロニクスは食い下がる。
「お前の気性は過去の諍いに執着するのを良しとするとは思えない。復讐にもこの地の支配にも興味がないのなら、俺と共に行くのも悪くはないと思うが」
「確かに報復にも覇道にも興味はないがね。しかし私は新世界とやらにも大して興味はないのだ」

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 だからなんかこう、自分の発言のアレさに気付いていなければいい。
 後はブログで語ったとおりです。
 ゼロさんが羅震将ズをスカウトしてくれればいい。

 あとですね、ミロクさんは、なんか興味がないというか少し疲れているんじゃないかと。
 700万年の間に、故郷を悼むことにも神々を恨むことにも疲れてしまった。疲れたというか。そこまで積極的な気分じゃなくなった。
 事象に慣れすぎて、それに対する感情があまり動かなくなってしまった。そんな感じ。
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2008/10/19
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