何かを忘れている気がする。
忘れてはならない何か。
己には酷く不似合いな、けれど切り離せない、何か。
上空から、小柄な一人とそれを囲むようにした数人へと魔法を放つ。暗い色をした炎に焦がされる前にその場を飛び退いた、緋の二対の翼を持つ相手の眼前へと降り立てば、少女のように優しげな面差しの少年は眼を瞠り、次いでその面に緊張と敵意を漲らせた。
彼の親衛隊か何かなのだろう、先ほどの魔法で散らされた騎士達が駆け寄ろうとするが、年若い王はそれを制す。反駁の声にも彼は答えず、その若草色の瞳に強い光を浮かべ、射るような眼差しでこちらを見る。
知らずその名が口をついて出た。
「…飛天王、アレックス……」
タオスベキテキノナ
道を阻む五つの―――――――――――――――
―――――――――厄介な相手
―――目的の障害
敵――――――
―――――――――――その首級を挙げよと
憎き愚か者ども―――――――
―――けれど懐かしい。
「……?」
唐突に浮かんだ思考に、心中で首をかしげる。
――懐かしく、
懐かしい?
――愛おしく
一体これは?
――大事な、
―――大事な何だというのだ!
唐突に脳裏に浮かぶ言葉を振り払う。
年若い飛天の王は先ほどの言葉を問いと受けたのか、こちらから視線を離さずに頷く。
「確かに僕が飛天王です。……貴方は何者ですか」
圧し殺すように出された低い声。その声に呼応するように胸中に広がった名も知らぬ感情に戸惑う。
「貴方は誰です、答えなさい!」
激しい誰何。
小柄な少年の纏う、その炎のような気迫に眼を細め、口を開く。
「――我が名は鳳王フルスベルグ」
握った抜き身の剣の、その切っ先を向ける。
「皇魔族四天王が一人として、その首貰い受けに来た」
忘れてはならない何か。
己には酷く不似合いな、けれど切り離せない、何か。
上空から、小柄な一人とそれを囲むようにした数人へと魔法を放つ。暗い色をした炎に焦がされる前にその場を飛び退いた、緋の二対の翼を持つ相手の眼前へと降り立てば、少女のように優しげな面差しの少年は眼を瞠り、次いでその面に緊張と敵意を漲らせた。
彼の親衛隊か何かなのだろう、先ほどの魔法で散らされた騎士達が駆け寄ろうとするが、年若い王はそれを制す。反駁の声にも彼は答えず、その若草色の瞳に強い光を浮かべ、射るような眼差しでこちらを見る。
知らずその名が口をついて出た。
「…飛天王、アレックス……」
タオスベキテキノナ
道を阻む五つの―――――――――――――――
―――――――――厄介な相手
―――目的の障害
敵――――――
―――――――――――その首級を挙げよと
憎き愚か者ども―――――――
―――けれど懐かしい。
「……?」
唐突に浮かんだ思考に、心中で首をかしげる。
――懐かしく、
懐かしい?
――愛おしく
一体これは?
――大事な、
―――大事な何だというのだ!
唐突に脳裏に浮かぶ言葉を振り払う。
年若い飛天の王は先ほどの言葉を問いと受けたのか、こちらから視線を離さずに頷く。
「確かに僕が飛天王です。……貴方は何者ですか」
圧し殺すように出された低い声。その声に呼応するように胸中に広がった名も知らぬ感情に戸惑う。
「貴方は誰です、答えなさい!」
激しい誰何。
小柄な少年の纏う、その炎のような気迫に眼を細め、口を開く。
「――我が名は鳳王フルスベルグ」
握った抜き身の剣の、その切っ先を向ける。
「皇魔族四天王が一人として、その首貰い受けに来た」
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( 2006/03/23)
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