捻りあげようと腕を掴んだ手を思いがけない力で振り払われては、形振り構っていられなかった。その手を厳重に覆った手袋ごと自身の鮮血に塗れて赤くぬめる手が、思い詰めた必死さでもって握りしめるナイフを、石墨は掴んだ。握りこんだ指に痛みが走る。
石墨の暴挙に驚いたのだろうか。細い細い月明かりの元、相手が眼を見開いた、ような気がした。夜目の利かない人間の視界ではそれは酷く曖昧にしか捉えられなかったが、それでも僅かな反応の真意に賭けない理由にはならない。
「放してください」
互いの力が拮抗して動きが止まる。冷たく白く光を跳ね返す金属に押しつけた掌の、その僅かな隙間を温い感触が伝う。
「……放して、」
ぽたりと一滴、赤黒い雫が足下に落ちるのと同時に、怯えたように強張る指から力が抜けた。何故か酷く頼りなげな気のする手から抜き取った白銀の刃を、石墨は出来るだけ遠くへと放る。その軌跡をぼんやりと視線だけで追った相手は、辺りに金属の澄んだ音が響くのを聞いてから、ぽつりと、すみません、と漏らした。
「怪我を、させてしまって」
今の今まで己の命を絶とうとしていた者には随分と似つかわしくない、静かな言葉だった。
石墨の暴挙に驚いたのだろうか。細い細い月明かりの元、相手が眼を見開いた、ような気がした。夜目の利かない人間の視界ではそれは酷く曖昧にしか捉えられなかったが、それでも僅かな反応の真意に賭けない理由にはならない。
「放してください」
互いの力が拮抗して動きが止まる。冷たく白く光を跳ね返す金属に押しつけた掌の、その僅かな隙間を温い感触が伝う。
「……放して、」
ぽたりと一滴、赤黒い雫が足下に落ちるのと同時に、怯えたように強張る指から力が抜けた。何故か酷く頼りなげな気のする手から抜き取った白銀の刃を、石墨は出来るだけ遠くへと放る。その軌跡をぼんやりと視線だけで追った相手は、辺りに金属の澄んだ音が響くのを聞いてから、ぽつりと、すみません、と漏らした。
「怪我を、させてしまって」
今の今まで己の命を絶とうとしていた者には随分と似つかわしくない、静かな言葉だった。
ななぞぞ吸血鬼パロ。
うちの子出会い編のような。
うちの子出会い編のような。
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( 2012/08/30)
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