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2024/09/23

 パン、と遠くで高らかな破裂音がして、まだ紺色の空に橙色の炎の花が咲く。
 大きく開いた細い炎の花弁は、次いでバラバラという音と共に先端から白い光を散らした。
「きれいだね!」 
 屈託無く言う市房の声に、清澄はうん、と同じように、明かりのない首都高からビルに遮られた空を見上げた。
 東京からドラゴンが消えた今でも、未だ駆逐しきれないマモノのために、一般市民の都庁からの出入りは制限されている。しかし、戒厳令が解除された今、複数行動が義務づけられてはいるものの、己の身を守れるムラクモ実働班所属者は、任務時間外の外部での自由行動が認められていた。あの戦いの前線に加わった者達の、ごくささやかな特権である。
「双眼鏡とかあれば良かったなぁ。無い?」
 セダンのボンネットに身を乗り出すようにして、首都高から空を眺めていた市房が振り返るが、清澄は苦笑して首を振った。住民達のささやかな「家にある物を持ち出したい」という要望に応えて、半ばボランティアで行った回収活動は、結局こんな時間までかかってしまった。非常事態だったとはいえ、何の訓練も受けていない清澄と市房に操車の許可は下りなかった。いずれは訓練を受けることになるのかも知れないが、ともかく今は回収品を詰めたダンボール箱を満載した自転車を押しての道行きだ。
「私は詰めた覚えがないよ。千秋は?」
「あたしもない。じゃ、無いかぁ」
 埃だらけのセダンから離れて、身軽な足取りで高架の縁へと向かう市房の後を、ゆっくりと自転車を引いて清澄は歩く。
「と思う。でも、双眼鏡使うより、全体を見た方が綺麗だと思うな」
「……ミコちゃんは花火、下から見たことある?」
 問われて、清澄は少しだけ瞬く。
「……ない。いつも少し離れたところから、こうやって」
 パァン。破裂音と共に、また空に炎の花が咲いた。彼岸花か枝垂れ桜を思わせるようにゆるやかに空へと落ちる光の花には、きっと何某かの思いが込められているのだろう。
「じゃあ、次はもっと近くで見よう。キレイだよ、迫力があってさ。小さい光の粒まで全部見えるから。……急いだら間に合うかな?」
「ちょっと難しいかな」
 いくらムラクモ隊員の運動能力が高く、身体そのものも頑丈に出来ているとは言っても、回収品まではそうはいかない。何かのミスで転倒させたりしては、今日の仕事の意味がない。
「じゃあ来年! か、どこかで花火回収してこよう!打ち上げ花火!」
 くるりと踊るように体ごと振り向いた市房の後ろで、また光の花が咲く。
 薄い逆光の所為で、輪郭だけを捉えることが出来た表情は楽しげに笑っていて、清澄もつられたように微笑んだ。市房の眼なら、多分これは視認できただろう。
 うん、と頷いた清澄に、市房は嬉しげに声を上げて笑うと、スキップのような足取りで自転車の後ろに回り込む。振り返るより先に、くん、と引いていた重みが軽くなるのを感じて清澄もハンドルを握る手に力を込めた。
「帰ろう。間に合わなくても、もっと近くで見れるよ」

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 うちのななぞぞ百合っぷる。
 女の子はきゃっきゃしてるのかわいい。
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2012/08/30
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