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2024/09/23

「よう英雄」
 ヒュ、という微かな風切り音に、咄嗟に上体をずらしたのは完全に反射だった。目の前を掠めていった拳から距離を取る間もなく襲った右腕からの第二撃は腕を払っていなし、そのまま前方へ重心をずらされた相手の足下を狙う――はずだった。
 だが、パドラが動くよりも早く、襟元から爪先までを黒で覆った影のような体が床を蹴る。床を凪いだ足払いの範囲を超え、宙返りの要領で床を転がり距離を取るかに思えたが、すっと背筋と走った悪寒に、パドラは咄嗟に腕を上げる。
 激しい激突音と共に、ルシェ族特有の尖った耳の横で、金属鋲の付いた靴が受け止められる。命中していれば脳震盪で気絶くらいはしていただろう。
 腕のみで着地し、そのまま間をおかずにリーチの長い蹴りを繰り出してきた相手は、わずかに覗いた瞳の色をちらとも変えず、即座に左足を戻すと同時に跳ね上がるように立ち上がり、再度向かって、
「ちょっ、待て!待てってば」
 制止の声を上げると、影のような装束の相手も動きを止める。が、こちらを睨んだ瞳には刺々しい色が浮かんだままである。
「何が待てだ。こちとら用はねーけど三年も待ってんだよ、これ以上待てるかワカメ野郎」
「用はねーってことは仕事しに来たわけじゃねーんだろ? いいから落ち着けよ話し合おう」
「誰が仕事でアンタのとこなんざ来るかよ、胸くそ悪ィ」
 吐き捨てるように言って、やっと青年は構えを解いた。あわせてパドラもやっと肩から力を抜く。はあ、と無意識のうちに溜息が漏れた。
「止めろよ、こういうの」
「アンタならもっと完璧に避けられただろ。弛んでんじゃねぇよ」
 弛んだつもりはないのだが、言われてみれば確かに動きが鈍ったように思うし、この一瞬の立ち回りはやたらと堪えた。今になってゆるやかに襲ってきた疲労に、何故だろうと内心で首を傾げるまでもなく答えに行き着いて、彼は苦笑した。3年も眠っていたのだから無理もない。何をされたかは知らないが、それだけ長い間動かなければ鈍るのも道理だ。そう、それだけの、長い長い間。
「そっちじゃなく」
「ああ?」
「英雄、っての」
 冗談でもそれ止めろ。
 言うと、青年は何故だか少し、ばつの悪そうな顔をした。

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 ルシェローグとキタローグ。二人は同僚。(でもルシェロのが年上/キタロはルシェロと合ったのが反抗期をこじらせてちょっと長引いてたくらいの時期)

 別に会う度こんな事やってるわけでもないんですが、一応目覚めないというのでちょっと心配していたキタローグさんのツンデレのツン面発揮中です。
 ちなみに今の所パドラさんはヴァンパイア+スコルピオ
 ロジエさん(キタローグさんの名前)はフットワークマスタリをのばしてます。だからうちのキタロは短剣よりも足技とかが得意だったりする。
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2011/08/22
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