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2024/09/23

 古の昔、世界には夜がなかったのだという。
 空には双子の光の娘がいて、一人は一日うちの初めの半分を、もう一人は後の半分を照らしていた。世界に夜が訪れることはなく、故に闇に潜む魔物も居なかった。
 ある時、あとの半分を照らす娘が、地上の水精に恋をした。娘は毎日毎日水精に向かって微笑みかけた。けれどある日、輝く娘の光を透かす、透明な水精がどんな表情をしているのかよく見ようと娘が地上に降り立つと、娘の放つ光に耐えきれず、瞬く間に水精は乾いて消えてしまった。
 嘆いた娘は輝くことを止め、だから昼には太陽の娘が、夜には輝くことを止めた娘が――月が今夜も空に昇る。


「そういう神話があるんだって」
 開け放たれたカーテンの向こう、四角い窓の向こうに浮かぶ月を見上げながら言うと、隣からはやや眠そうな相づちが返ってきた。
 時間が時間だから、これは仕方がない。苦笑して、カナトは窓から傍らへと視線を移した。いつもよりやや焦点の緩い、翳りを帯びた金色の――ちょうど今夜の月を模したような色の瞳を覗き込む。
「哀しい話だね」
 緩く鬱金色の瞳が瞬く。それで何となく先を促されている気になって、カナトは手を伸ばす。自分のものとは違い、重たげな色の髪を指先で梳きながら言葉を続けた。
「近付きたいと願っただけなのに、それさえ叶わない」
 そう呟いてから、しまったかな、と思う。どうも暗い話になってしまった。その場の雰囲気を誤魔化すべく、そろそろ寝ようか、と提案するよりも先にですが、と囁くような声が上がる。
「太陽の視線を、一時でも得られたならば、幸せだったでしょう」
 半ば睡魔に支配されつつある声は、眠りの誘惑を含んでどこか甘い。思いがけない台詞にカナトが瞬いていると、ああ、とケンが溜息のような声で呟いた。
「でも、貴方になら消されても構いませんが……それで貴方が輝かなくなってしまうのは、」
 それは、嫌です。言ったきり、鬱金色の瞳は瞼の奥に閉ざされて、開くことはない。
 穏やかな寝息を呆然と聞いて、カナトはゆっくりと息を吐いた。
 なんてことを言うのだろう。
 そう思いながらも、口では別の言葉を紡いでいる。
「……謙虚だなぁ」
 きっと今の台詞は、紛う事なき彼の本心だったのだろうけれど。
「失ったら、二度と輝けなくなるくらい、深い傷になるよ」

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 捏造神話。
 ぽんと思いついたというか、脳裏にあったのを書き出しただけなんで、きっと何かを元にしてるんだとは思うんですが、思い出せない……

 一応ifの話と言うことで…………正直この二人、こんな甘いやり取りするとは思えない……
 お互い半ば寝惚けてます。そうでなければ素直にこんなことも言えない。
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2010/07/21
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