いつもは的を狙うだけのレンズスコープを、いつもとは90度違う方向に向ける。
　まあるく切り取られた世界。

　窓。
　柱。
　渡り廊下の床、コンクリート。
　人。
　人。
　腕。
　背中。
　女みたいに長い髪。

　の、揺れる、背中、肩、が振り返って。

　十字の照準に捉えられた彼は、


「…………の、ヤロ！」
　毒づいて、ゲルブは銃を下げる。
　
　撃ってみろよって顔しやがって。
　撃てないだろって顔しやがって。

　ああそうだよ撃てないよ。撃ったところでこんな玩具じゃ、お前の所にすら届かない。
　影を踏むような嫌がらせ。少しだけ物騒な冗談だ。
　けれどその奥に潜む敵意と悪意を見透かされた気がして、どうにも寒いような気分になる。
　
　なにより銃口を向けられて、それでも思惑を見透かしたように、
　に、と、薄く嗤ったあの顔が網膜に焼き付いている。

　出会って間もない頃の、未だ全然仲良くないゲルブとヤウズ君。
　学パラなので、ゲルブは的に向かってしか撃ちません。今回も多分弾とか入ってない。

　ヤウズ君は狙ってるの知ってて、でも照準の中に入るまで待ってから挑発してます。嫌なヤツですね！（笑）
　でも多分ヤウズ君の心境としては、撃つ気がないなら狙うなよ、って感じだと思う。