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2024/09/23

「……ねえ、おじさん」
 見上げた夜空には雲一つ無くて、弓のように細い月の光は空を照らしきるにはか細すぎる。飛天領で見る空の何倍もの星が散らばった空を見上げながら、これくらい沢山見えれば星座を作るのも楽だろうな、とサイアスは頭の隅で考えた。
「昔、俺が公爵になりたい、って言った時のこと、覚えてますか」
 一拍して、肯定の返事が返ってくる。物覚えの良いセツナのことだ、あの時の台詞どころか、サイアスの声や表情だって覚えているに違いない。少なくとも、その程度のインパクトの台詞を言った自覚はあった。
 もし俺が、言いながら、横目で斜め後ろに立つセツナを伺い見ようとしたが、残念ながら視界には入らなかった。首を動かせば見えるけれど、何となく反応を気にしているのをさとられたくなくて、サイアスは仕方なくそのまま続ける。
「……もしも、俺がもう一回、公爵になりたい、って言ったら、おじさんは反対しますか?」
 言ってから、心臓が小さく跳ねた。ああ、たかが一言訊くだけで、こんなにどきどきするなんて。カレンに知られたら笑われてしまうかも知れないけれど、それでもこればっかりは仕方がない。幼い時から面倒を見てくれた人だ。その人と、事によっては決別しなければならないかも知れない。
 静かに静かに深呼吸して鼓動を落ち着けるなか、風が足下の伸びた草を揺らして通り過ぎていった。さあ、という草の音は一度きりで、後は星のまたたく音さえ聞こえそうな静寂が続く。
「私が反対したところで」
 唐突に落とされた言葉に、戻りかけた鼓動が跳ねた。
「お前はなるつもりなんだろう、今度こそ」
 草を踏む音が近づいてきて、白い衣装がサイアスの左側の視界に入る。その表情を確認したくて出来なくて、結局サイアスは星空から地平線へと視線を移した。

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 拙宅のサイアスさんは、割と普通のお兄さんです。何でかな、若い個体という印象が強いせいかもしれない。彼は少しだけセンスがずれた人だと思います。

 反対したところで、とか言ってますけど、セツナさんは二度目は多分、賛成というか、応援してくれるんじゃないかと思います。
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2008/07/23
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