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2024/09/23

「あんたとは二人っきりで話がしたいと思ってた」
 口説き文句そのままだな、とサイアスは思う。奇しくも場所はベッドの上、時刻は夜も更け星明かり、手を伸ばせば触れる距離にあるのは絶世の美貌だ。ただし、相手はまったく乗り気でないようだが。
「貴様に話すことなど無い」
 おや、こちらもまたお決まりの台詞。
「そう言わずにさぁ。俺は聞きたいことが沢山あるんだ」
 軽い口調で返すと、こちらを覗き込む相手の目の剣呑な色が増した。仄暗い室内で、青玉のような見事な色の瞳がこちらを睨んでいる。あーあ、矢っ張り嫌われている。どうにもこの相手については納得のいかないことだらけだ。
「折角誰も聴いてないんだから、ゆっくり話そうぜ――おっと」
 台詞の途中で相手の肩がわずかに動いたような気がして、サイアスはわざとらしく余裕ぶって声を上げる。右手に握ったものを押しつけたまま、
「動くなよ。俺は死にたくないし、未だあんたも殺されちゃ困る」
 表情を変えない相手に、サイアスは薄く笑みを浮かべたまま言う。サイアスとて伊達に何百年と生きてきたわけではない。仕事だと割り切ってしまえば、心とかけ離れた仮面だって被ることが出来る。そう、少なくとも、表情くらいなら。
 青い瞳はちらり、とサイアスの右手の方へと――おそらくは、その手に握られた拳銃へと――視線をやった。体の陰になって見えないはずだったが、ナルキッソスは感情の伺えない息を吐く。
「剣聖が、まさか銃とは」
 内容からすると多少嘲りを含むだろうか。言葉に含まれる棘には既に慣れっこなので今更腹も立たない。それに多分、立てたら相手の思う壺なのだろう。
「枕の下に拳銃――なんて、ただの様式美だったんだけど。今更使うなんて思わなかったぜ。あんたこそ、」
 饒舌を意識して語るサイアスの視界の端に、月光を弾く銀色がちらつく。
 窓の外の、歪な形をした雲がゆっくりと風に流されてゆく。引っ掻いたような三日月の、微かな光。
 自分に半ばのし掛かる相手の顔が淡い月光の元に露わになる。その、おそらくは、奇跡と形容していい造形が。
 ――納得がいかない。
 何度も呟いた言葉を心中でもう一度呟いて、けれど口では別の言葉を紡ぐ。
「斧でも持ってくるかと思ったら」
 サイアスはちらりと、己の喉に向けられた切っ先へと視線をやる。微動だにしない白い手が握る短剣の柄には、見覚えがあった。柄に巻かれた赤い革と、柄頭付近に打たれた鋲に刻まれた紋章――飛天騎士団の支給品だ。今の時勢で武器を置き忘れる粗忽者など居ないだろうから、おそらくは牢番の物を奪ってきたのだろう。サイアスにとっては最初に出会ったときに身をもって体験済みなので今更だが、眼前の男は綺麗な顔に似合わず、荒事も充分以上にこなすらしい。
 半ば以上を冗談で言った言葉は流されるかとも思ったが、ややしてから薄い唇は短い言葉を落とした。もっとも、白い顔に浮かぶ表情は、その間も1ミリたりとも変化しなかったが。
「……口数が多いな、司令官」
「最初に尋問の続きだって言ったろ?必要な言葉は惜しむなって言われたんだよ、昔」
 俺にそう言った奴の名前を教えてやろうか、言いかけて、サイアスは思わずその言葉をのみこむ。

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 夜這いじゃなくて夜襲なんだぜ、これ。

 時間軸はルシフェル→アルデバラン→アルビレオです。
 どっかの天使様方が鍵壊して去って行ったので、その後。
 完成してから投下……と思ったけれど、なんだか公式見てたら焦ってしまって辛抱堪らなくなったので投下。
 完成すると良いな……

 アルビレオは全天で最も美しい二重星と言われています。
 見た目だけでなく、ちゃんと共通の重心を持っている星達でもあります。
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2009/12/23
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