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2024/09/23

「ですが、理解しがたい趣味さえ除けば、私は君のことが好きですよ」

 こんな時に何故そんなことを言うのか。
 熱く生き物の温度を伝えてくる肌だとか、湿った髪の匂いだとか、そんなものの所為で、まるで距離がゼロになったような、解け合う近さにいるようなそんな錯覚に陥る。
 追い詰められた気分で、止めてくれ、と思う。
 何故こんな時にそんなことを言うのか。
 肌を重ねた所為で心まで重ねられそうな、そんな錯覚にさえ落ちそうな、こんな時に。

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「ご覧よ」
 青い瞳が向いた先を追って、ホルストは眼を細める。白んだ空と黒く塗りつぶされた地平、その境界。
 ちかり、と。さした光があっという間に光度を増す。溢れる光、目覚めゆく地平。
「日の出だ」
 ゆっくりと姿を顕してくる太陽は眩しすぎて、手をかざして、更に顔を背けたホルストとは違い、ミロクは未だ地平へと眼を向けている。

 どことなく機嫌の良い彼の顔にも日が差して、瞼が頬が橙色に染まる。

 そうですね、君は変わりゆくものが好きだから。
 でも私はどちらかといえば、この一瞬だけを切り取って大事にとっておきたいのです。


 (この一瞬が永遠になればいいのに)

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2009/01/01

 何から言い訳したらいいのか解らない……

 ええと…………大した物ではございませんがホルミロで、所謂ヤオイでございます。
 えっと別人度高いです。別人度というかむしろ別人そのものです。
 このサイトの物にしてはエロい話です。ぶっちゃけ致しているだけです、すいません。


 いや、本当にすみません。
 でもたまーに書きたくなるじゃないですかいつもと違う方向のものって!!
 ……あ、はい、力説するな。ごめんなさい自重します。



 何度も言いますがホルミロです。
 大したエロはないですが、このサイトにしては異質な話ですのでお気を付けください。多分R-15くらい?

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「私が言って良いことなのかは解りませんが」
 そう前置きしながら迷うような素振りを見せて、それでもその一瞬後には特に気にした様子もなく、紅髪の鬼は口を開いた。
「彼はこの花が好きではないのですよ」
 この花、そう言ってホルストが見上げた先には、ほんのりとだけ桃色に色づいた花がある。花が散った後に葉を出すこの樹は丁度今が花期で、焦げ茶の枝に花だけが付いている様子は、少し奇異ではあるがとても綺麗だ。
 ひらりとがくから離れた花弁が一枚、くるくると舞いながら落ちてゆくのを見ながら、マキシは意外だな、と呟いた。
 桜という名のこの樹には、いかにも今話題にされている彼が好みそうな話が沢山ある。例えば、剪るとそこから腐って枯れてしまう儚さや、花期の前には樹皮の内側が紅に染まるという健気さだとか。
 特に、「桜色」と呼ばれる白とも桃色ともつかない淡い色合いは、話題にされている彼が好みそうだと思っていたので、一体この植物のどの辺りが気に入らないのだろうとマキシは枝を見上げる。
「嫌いというわけではないのでしょうが」
 マキシの考えを読んだようにそう続けたホルストは、思案のためか顎の辺りに手を当てて少し視線を下げた後、言葉を選んだ慎重さで言う。
「好きではない、と言うか……そう、苦手というのが近いかも知れません」
 マキシは戸惑いの混じった相づちを打つ。目の前の樹には、異常な造形の場所も、強烈な匂いも、グロテスクな模様も、およそ嫌われそうな要素は何もない。だからきっと苦手というなら、それは多分樹や花の見た目や生態ではなく、この種の樹に纏わる記憶か何かなのだろう。ならばマキシが推測できるようなことではない。
 見上げたままのマキシ達のすぐ上を、微かな風が通り抜けてゆく。並木状に遠くまで続いている桜の枝の間を縫っていった風に揺らされて、またはらはらと花弁が落ちた。
「ほら、端からちらちら散っていくでしょう?」
「え?ああ。……それが苦手な理由だ、って?」
 訝しさの滲む声に、ホルストはちらりとマキシへ視線を寄越して、その端正な顔で僅かに微笑んだ。
「そうだ、と言えばそういうことになるのかもしれませんね」
「でもこの樹が花を散らすのは、」
 言葉の途中で先ほどよりも強い風が吹いて、今度は盛大に花が舞った。雪よりも激しく、雨よりは静かに積もる花。
「むしろ好きになれそうな理由な気がするけどな」
「私もそう思いますよ。百合や牡丹などの大きな花にはない魅力がありますね」
 拍子抜けするほどあっさり同意したホルストは、そのまま一歩踏み出して前へ出ると、マキシの方へと向き直る。芝居がかったような流麗な動作で両手を広げた。
「こうして散る光景はそれはそれは美しい」
 彼に恋い焦がれて追いかけてきたという女性達なら、ここでその胸に飛び込んでしまいたいと思うのかも知れない。恋に目隠しされてしまった彼女達なら、それくらいしてもおかしくない。だがホルストは、でも、という否定の言葉と共に迎え入れるように広げていた両手を下ろしてしまった。
「結局最後に残るのは裸の樹です」
 言って彼は少しだけ寂しそうな眸をする。
「彼は、それを見て故郷を思い出すのですよ」
 その言葉に、マキシは今更ながら、彼等がこの世界へとやってきたわけを思い出す。当時既にほとんどが崩壊し、滅びかけていたという彼等が住んでいた世界。故郷で起きた出来事のことを彼等はあまり語りたがらないが、断片的に彼等が語る言葉や、仲間同士の会話から、羅震獄という名で呼ばれるそこがどんな世界だったか、どういう風になってしまったのかは想像がつく。
瑞々しい姿のままでばらばらになって散っていく花は、もしかしたら故郷が壊れてゆく光景に似ているのかも知れない。
 それを思った一瞬マキシは言葉を失い、間の悪い沈黙を破るべく口を開く前に、だがホルストは慰めも同情も許さず、言葉の間を奪って肩を竦めた。
「本人は認めたがらないでしょうが、見かけによらず感傷的ですからね」

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