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2024/09/23

 ごめんなさい。
 呟くように落ちた言葉をなんと取ったのか、彼は少し疲れた顔色で笑って、メリルの所為じゃない、と言ってくれる。
 その言葉がとても優しくて、落ち着いた声音で、だからメリルは嬉しくて切なくて申し訳なくて、何も言えなくなってしまう。
 慰めるように肩に回された彼の掌の温度を感じながら、今ならこのまま彼の胸に顔を埋めても良いのかも知れない、とぼんやり思った。
 けれどとてもそんなことは出来ずに、メリルは代わりに控えめに彼の肩へと額を寄せる。
 出なかった言葉の代わりに、胸の中でもう一度ごめんなさい、と言う。

 ごめんなさい。
 ごめんなさい神様。
 あなたが戻ってきて良かった。
 まだ一緒にいられて良かった。
 神力を無くしたのがゼロさんで良かった。
 あなたが帰ってしまわなくて良かった。

 ごめんなさい神様。
 私は罪深い。

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2009/07/17

 少女の声に胸が詰まった。
 まろび出るように駆けてくる小さな体を受け止めるために慌てて両手を広げる。
 ぶつかった衝撃は体の大きさに見合って軽くて、受け止めるのは簡単なはずなのに、どうしてか苦しいような気持ちがこみ上げてくる。
 怪我はない?まもれなくてごめん。無事で良かった。おかえり。

 (ああ、どうしよう)

 言わなければいけないことも、伝えたいことも、沢山あったはずなのに。
 細い肩を抱き締めたら、そんなこと全部吹き飛んで、苦しくて安心して切なくて、どうしようもなくて、何も言葉が出てこない。

 (……離したくない。離れたくないんだ)

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2009/02/25

 それは肩の辺り、心臓よりも少し逸れた胸の左側に、小さな火傷としてあった。
 たった一撃。
 流血はなく、打撲すらなく。
 けれどたったその一撃が、少女の命を奪った。



 許せなかったんだ。
 彼女を襲った鬼が、じゃない。
 それを止められなかった自分が。間に合わなかった甘さが。


 その言葉に籠められた重さも大切さも尊さも、理解しているつもりだ。
 だからこそ軽々しく手を出すべきではないと、先生は言った。
 倫を守るというのは、優しくあることとは違う。
 例えば病を癒すこと、呪いを解くことと違って、失われた形のない物を取り戻すのは、その理由に関わらずとても重い責任が伴う。
 神の力で命を扱うのは、ただの傲慢だ。


 けど助けられなかったのは俺で、見捨てられなかったのも俺だから。
 お咎めなんて関係ない。
 何だってする、身を削って差し出せと言うのなら、いくらでも。

 だから、どうか、どうかもう一度。

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 これはきっと慈悲じゃない。


 許してくれ、なんて言えた義理じゃないけど、それでも君に許して貰う機会が欲しかった。
 助けたいと思った心に、嘘も偽りもないけれど。

 だから、お礼なんて言っちゃいけない。
 そこまで胸を張れるような事じゃないんだ。

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2008/10/22
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