じゅうじゅうと鍋の底で透明な液体が沸騰している。
厨房に満ちる甘い香り。
木べらで鍋底を掻き回すと、ゆるく粘性を持ったそれはとろりとへらの跡を残した。とろとろと煮詰めるカラメル。鍋底から沸き上がる水蒸気。
立ち上る熱気が頬を炙る。
構わずメリッサは鍋底を睨み付ける。
(ファーラ様は、以前と比べて、色々な人とお話しするようになった)
(演じる必要が無くなって、人を怖がらなくなった)
(このギルドの誰もが、いいえ、アーモロードへやってきてファーラ様と話した人全員が、演じないファーラ様を知っている)
喜ばしいことのはずなのに、メリッサはそれが悔しい。
(解ってます。……嫉妬だなんて)
浅ましい。恥ずかしい。なんて幼くて勝手な感情。
解っているのに、胸の奥からは沸々と煮え立つような感情が沸き上がってくる。
粘ついて、どろりとして。
汚い、感情。
泣きそうになりながら掻き回した鍋の底で、じわりとカラメルが色づきはじめる。甘さに混じる苦い香り。
ああどうかこの火を止めて、これ以上苦く焦げ付く前に!
厨房に満ちる甘い香り。
木べらで鍋底を掻き回すと、ゆるく粘性を持ったそれはとろりとへらの跡を残した。とろとろと煮詰めるカラメル。鍋底から沸き上がる水蒸気。
立ち上る熱気が頬を炙る。
構わずメリッサは鍋底を睨み付ける。
(ファーラ様は、以前と比べて、色々な人とお話しするようになった)
(演じる必要が無くなって、人を怖がらなくなった)
(このギルドの誰もが、いいえ、アーモロードへやってきてファーラ様と話した人全員が、演じないファーラ様を知っている)
喜ばしいことのはずなのに、メリッサはそれが悔しい。
(解ってます。……嫉妬だなんて)
浅ましい。恥ずかしい。なんて幼くて勝手な感情。
解っているのに、胸の奥からは沸々と煮え立つような感情が沸き上がってくる。
粘ついて、どろりとして。
汚い、感情。
泣きそうになりながら掻き回した鍋の底で、じわりとカラメルが色づきはじめる。甘さに混じる苦い香り。
ああどうかこの火を止めて、これ以上苦く焦げ付く前に!
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( 2010/09/07)
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