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2024/09/23

 カード裏のストーリーには、マキシさんが飛雷震を仕留めた、とあったので、

 飛雷震が、マキシさんにとって最初で最後の一匹であったら、という妄想です。

 1のマキシさん視点。

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 雷を操る敵に、最初に脳裏に思い浮かんだのは苦い記憶で、だから、もう決して二の轍は踏まないと。
 甘さなんて捨ててしまえ、そう思ったのに。
 なのに、無力化した鬼に、何故か少女の時のことが重なったのだ。

 
 神である己の本来の力を解放してねじ伏せた相手は、それでも抵抗しようというのか、指先に雷を紡ぐ。けれど、それはすぐに弾けて消えてしまった。
 戸惑う間もなく、押さえ込んだ体が弛緩するのが解る。
 態度で敗北を認めたと示してみせた鬼は、視線を少し下げてこちらを見た。少し乱れた前髪の合間から覗いた明るい蒼の色をした瞳に、奇妙な諦観の色を見た気がして、それで、――唐突に、思ってしまった。


(……俺は)

(何をしているんだろう)


 きっと、使命を守るつもりならばはやく封印してしまうか、仕留めてしまうべき(……飛雷震にそうしたように)なのだろう。
 けれど、記憶の中の傷ついたメリルの姿は、彼が居なくなったら、寂しく思ったり、悲しく思ったりする仲間がいるのかと、そんなことを想像させるには充分だった。
 誰かに二度と会えなくなってしまうのは酷く辛いことだ。
 言葉で聴いて知ってはいた。本で読んで想像した。けれど、

(あんなに辛いことだなんて思わなかった)

(とてもじゃないけど、耐えられなかった)

 彼に二度と会えなくなったら、彼を知る誰かは、泣くだろうか。恨む、だろうか。 

(……それは)

(その誰かにとって、俺は飛雷震と同じ……)


「手を下すのなら早くしたまえ」

 掠れた声が耳朶を打った。マキシに捕らえられた鬼は、まるで考えを読んだかのように酷いくらいあっさりとそんなことを言う。
 動揺で肩が揺れた。
 違う、あんたを殺したいわけじゃない。そうじゃなく、

「それとも一時の情けをかけて封印するかね?見逃す気がないのなら、大層な悪趣味だ」

 嘲笑を含んだ声に、胸の内に沸き起こった感情は激しくて深くて、

(悔しくて)
(言われたことが、そう思われたことが悲しくて)
(けれど否定しきれなくて)
(あんまりいろいろなことが綯い交ぜになって)
(自分の気持ちもよく解らなくなってきて)
(どうしたらいいのか解らなくて、)


 瞬きをしたら、涙が出た。
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2008/10/25
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