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2024/09/23

 川面に突き出た岩の一つに腰掛けた人影を認めて、やっぱり、とマキシは小さく笑う。
 川の上の風は速い。もう冬も近いこの時期、風は冷たいだろうに、彼は何でもないように、蒼い髪が揺らされるに任せている。
 そうして星を数えている彼の気配は滑らかにこの場に溶けこんで、まるで景色の一部のようだ。青い容姿も闇の中にとけてしまって、岩上に落ちた袂さえ違和感がない。唯一浮いた色をした紅白の襷だけが、存在を主張していて、マキシはなんだか隠れん坊の鬼にでもなった気分だ。
 水の音にまぎれてか、彼は珍しくこちらに気付かない。いや、気付かないふりをしているだけかも知れない。ずっと黙っていたことを知った後に顔を合わせるのは、少し気まずい。
 もしも名前を呼んで、それでも彼が振り返らなかったら。そんな「もしも」をぼんやりと危惧しながら名を呼ばわると、彼は存外簡単に振り向いたので、マキシはそっと息を吐いた。
 帰ろう、と言うのは簡単だったのだけれど、それもなんとなく後ろめたくて、結局、星、見てたのか、と当たり障りのないことを問うた。そう、気付かないふりだとか振り返らなかったらだとか、そんなことを考えてしまうのは、全部マキシに秘密を知ってしまった後ろめたさがあるからだ。
 あまり意味の無かった台詞の真意も問わず、彼は、来るかい?とマキシに向かって掌をのべる。
「故郷の空とは違うから、星空案内は出来ないが」

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2009/11/10
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