ぼんやりと開いた目には、薄墨色の空に残る星が映った。背中側には硬い地面の感触があって、自分が寝転がっているのだと知れる。いつの間に眠ってしまったのだろう?
「まだ夜明け前だ。もう少し眠っていても構わないよ」
昨日は散々駆けたのだから、とそんな風に最近憶えた声が言う。
この声は誰だっただろう。いつもの、落ち着いて安定した懐かしい声音で呼ばれたなら、きっとその声が目覚めを促すものでも安心して眠ってしまうのに。
起きなければと思うのだが、聞き慣れた声でなくても今は意識が眠りの中に落ちていきそうで、随分酷使した人の体には疲労が残っているようだと、まだ半分微睡みの中でマキシは思う。
一体何をそんなに疲れることをしたんだっけ。そうだ、羅震鬼と戦って、天使を追いかけて駆けて。何で天使を追いかけていたかって、そう、メリルが。
思い出したら目が覚めた。
思わず起き上がりかけたマキシの額を、やんわりと金環をはめた腕が押しとどめる。
「何処へ行く気かね」
反射的に額へやった手を逆に掴まれて、それがどういう意味かを頭が理解する前に続けざまに言葉が放たれる。
「まだ賢者殿もアゼルも寝ているよ」
そこまで言われてやっと、はじめに言われたように今が夜明け前で、守ってやらなければならない仲間がいて、何処へメリルを助けに行けばいいのかさえ解らないことを思いだした。
メリルを追って散々駆けて、撒かれた後も天使達の飛び立った方向へ痕跡を探して散々歩いたけれど、結局天使のものとも鳥のものとも知れない羽毛を拾っただけで、手がかりもろくになく夜になってしまった。どうすることも出来ないのだ、今は。
そこまで頭が理解しても、じりじりとした気持ちは消えない。わだかまる心を吐き出すように溜息をついたマキシを、落ち着いたと判断したのか、傍らに腰を下ろしていたミロクはマキシの手を放す。人肌の温度が離れれば、掌は夜気の温度を拾ってやけに冷たい。
「……眠れないでも、まだ横になっていると良い。どうせ今日も歩き回るつもりだろう?」
言葉尻は疑問の形だったが、ミロクの声には確信の響きがある。どうやらマキシの考え方は大体把握されてしまっているらしい。
たった数日前に出会ったばっかりなんだけどな、そう思ってからマキシはふと気付く。そういえば彼はいつからここにいるのだろう。
「ミロクは……見張り?ちゃんと寝たのか?」
寝転がったまま、マキシはミロクの方へと少し顔を傾けて問う。少しの間答応えはなくて、まさか聞こえなかったのだろうかとマキシが視線を上げるより先に、マキシのそれより大きな掌が降りてきて、頭をかき回す。
多分、誤魔化されてる。
「……寝てないの?」
確認すると、髪をかき回していた手がゆっくり止まる。じんわりと指の温度が伝わってきた。
「……平気だよ、一日くらい」
「平気でも休んどけよ。何なら見張り替わろうか?」
「それは駄目だ」
「何で」
「私がこうしていたいから」
ミロクの答えに、何かそこにいて楽しいことでもあるのだろうかとマキシは考える。少なくともマキシにはこれといったことは思いつかない。
「……ミロクって変わってる?」
「どうだろうね。だが好いた者の傍に居たいと思うのは自然なことだろう?」
好いた。マキシは口の中で繰り返す。それは、そうだ。変なことでも何でもない。
けれどマキシは、未だに彼等がゼロニクスではなく自分を選んでくれたことが不思議でならない。自分を卑下するわけではないが、ゼロニクスは良き兄弟子で、出来た神だった。聞けば残りの羅震鬼の大半は、ゼロニクスに従っているという。何故ゼロニクスには従わなかった四人がマキシに力を貸してくれたのか――傍らの彼は、問えば教えてくれるのだろうか。
「まだ夜明け前だ。もう少し眠っていても構わないよ」
昨日は散々駆けたのだから、とそんな風に最近憶えた声が言う。
この声は誰だっただろう。いつもの、落ち着いて安定した懐かしい声音で呼ばれたなら、きっとその声が目覚めを促すものでも安心して眠ってしまうのに。
起きなければと思うのだが、聞き慣れた声でなくても今は意識が眠りの中に落ちていきそうで、随分酷使した人の体には疲労が残っているようだと、まだ半分微睡みの中でマキシは思う。
一体何をそんなに疲れることをしたんだっけ。そうだ、羅震鬼と戦って、天使を追いかけて駆けて。何で天使を追いかけていたかって、そう、メリルが。
思い出したら目が覚めた。
思わず起き上がりかけたマキシの額を、やんわりと金環をはめた腕が押しとどめる。
「何処へ行く気かね」
反射的に額へやった手を逆に掴まれて、それがどういう意味かを頭が理解する前に続けざまに言葉が放たれる。
「まだ賢者殿もアゼルも寝ているよ」
そこまで言われてやっと、はじめに言われたように今が夜明け前で、守ってやらなければならない仲間がいて、何処へメリルを助けに行けばいいのかさえ解らないことを思いだした。
メリルを追って散々駆けて、撒かれた後も天使達の飛び立った方向へ痕跡を探して散々歩いたけれど、結局天使のものとも鳥のものとも知れない羽毛を拾っただけで、手がかりもろくになく夜になってしまった。どうすることも出来ないのだ、今は。
そこまで頭が理解しても、じりじりとした気持ちは消えない。わだかまる心を吐き出すように溜息をついたマキシを、落ち着いたと判断したのか、傍らに腰を下ろしていたミロクはマキシの手を放す。人肌の温度が離れれば、掌は夜気の温度を拾ってやけに冷たい。
「……眠れないでも、まだ横になっていると良い。どうせ今日も歩き回るつもりだろう?」
言葉尻は疑問の形だったが、ミロクの声には確信の響きがある。どうやらマキシの考え方は大体把握されてしまっているらしい。
たった数日前に出会ったばっかりなんだけどな、そう思ってからマキシはふと気付く。そういえば彼はいつからここにいるのだろう。
「ミロクは……見張り?ちゃんと寝たのか?」
寝転がったまま、マキシはミロクの方へと少し顔を傾けて問う。少しの間答応えはなくて、まさか聞こえなかったのだろうかとマキシが視線を上げるより先に、マキシのそれより大きな掌が降りてきて、頭をかき回す。
多分、誤魔化されてる。
「……寝てないの?」
確認すると、髪をかき回していた手がゆっくり止まる。じんわりと指の温度が伝わってきた。
「……平気だよ、一日くらい」
「平気でも休んどけよ。何なら見張り替わろうか?」
「それは駄目だ」
「何で」
「私がこうしていたいから」
ミロクの答えに、何かそこにいて楽しいことでもあるのだろうかとマキシは考える。少なくともマキシにはこれといったことは思いつかない。
「……ミロクって変わってる?」
「どうだろうね。だが好いた者の傍に居たいと思うのは自然なことだろう?」
好いた。マキシは口の中で繰り返す。それは、そうだ。変なことでも何でもない。
けれどマキシは、未だに彼等がゼロニクスではなく自分を選んでくれたことが不思議でならない。自分を卑下するわけではないが、ゼロニクスは良き兄弟子で、出来た神だった。聞けば残りの羅震鬼の大半は、ゼロニクスに従っているという。何故ゼロニクスには従わなかった四人がマキシに力を貸してくれたのか――傍らの彼は、問えば教えてくれるのだろうか。
まだ出会ったばっかりで擦れ違い気味のころ。
私はミロクさんは性格に捻りが加わってはいるけど結構素直な人だと思っています。マキシ様には嘘つけない。
3弾では四将みんな瓶から出てきているようなので、二弾以降なら瓶から出てきていても良いかなぁ、なんて。
私はミロクさんは性格に捻りが加わってはいるけど結構素直な人だと思っています。マキシ様には嘘つけない。
3弾では四将みんな瓶から出てきているようなので、二弾以降なら瓶から出てきていても良いかなぁ、なんて。
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( 2009/05/26)
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