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2024/09/23

 眠りを妨げないように、出来るだけそっと、注意深く、ゼロニクスは金色の頭を撫でた。倒木に腰掛ける彼の胸(そう、肩ではなく胸だ)には、金色の髪に黒く仰々しい角を生やした子供が頭を預けて眠っている。
 見下ろすゼロニクスの視線の先で寝息を立てる姿はいかにも穏やかだが、ただの子供と侮るなかれ、この子供の正体はゼロニクスと同じく、近ごろ生まれた神であった。しかもただの神ではない。古の時代に生まれていたならばおそらく破壊神の傍にあって一柱となったであろう、闘いの性を持つ神だ。その証拠に、孤独に生まれ落ちたこの子供は、住まうのは獣だけという山奥で、力余って乱暴な振る舞いをしては、猛獣のように辺りを荒らしていた。この倒木も、先ほどこの子供が倒した物だ。
 その行いといえば、ついには近くに住む者達に恐れられて、討伐の嘆願まで出ていたほどだが、おそらく子供に悪意はないのだ――と思う。
 神力を押さえ込んで近づいたゼロニクスに気付いた瞬間の子供の顔――涙を拭った顔に浮かんでいた驚きや気まずさや警戒と、そして喜色は、決して嘘ではないはずだ。
 涙の訳を問うたゼロニクスに、子供は、困り切って、ここには獣しか居ないから、と答えた。寂しいという言葉も知らない子供に悪意はなかったと、ゼロニクスは信じたい。
 泣き疲れて話し疲れた彼が目覚めたら、ゼロニクスはここを発とうと思う。もちろん、この子供を連れて。この子には多分、手を握ってくれたり、話しかけてくれたりする相手が必要だ。
 師であるアフラノールはまた、ゼロニクスの顔を見て、困った奴だ、と言うだろうが、きっと面倒を見てくれるだろう。未だゼロニクスが分別も付かない頃には、よく動物を拾ってきては困った顔をされたものだった。それでも師はゼロニクスと一緒になってそれらの面倒を見てくれたのだが、その度に師はゼロニクスに言った。

 お前が孤独な者を放っておけないのは解る。彼等に対して尽力するのも、お前の生まれ持っての性と神格がさせるものだろう。だがゼロニクス、お前が手を差し延べた者は、いつか誰かとの繋がりを作って、お前の手から離れていくぞ。だからといって救える者まで見放す必要はないが、手を離れる瞬間を見守れる覚悟は持っておけ。

 多分この子供も、こうして手を取ったゼロニクスの手を放して、他の誰かに手を差し延べる日が来るのだろう。
 そんな嬉しいような寂しいような日が来ることを、ゼロニクスはこうして手を差し延べる日から考えてしまっている。

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2009/05/22
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