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2024/09/23
 神羅

 血色の悪い指が、半透明の板の上に踊る。長い指がそれぞれ別の動きをする様は、さながら蜘蛛のようだ。
 指先が触れると、赤い文字は一瞬光を増して、すぐに元の光度へ戻る。それが何度も続けられて、やがて手の動きが止まった。
「……消耗率18.6%、撃破率15.2%」
 口を尖らせて呟いて、アナンシは持っていた板を腕で挟んで、その肘を曲げた膝の上に器用に載せて頬杖をついた。
「結局今日も負け戦、かぁ」
 憂鬱そうな台詞に反して、表情に憂いはない。幼い顔のパーツは、ただ退屈を表している。その表情に、ほんの少し苛立ちが混じった。
「…誇りだの、何だのってさ。そんなのどうだって良いよ、大事なのは結果でしょ?」
 ねぇ?とアナンシはその細い体躯に似合わぬ右手の指先でつり上げた、自らが飼う子蜘蛛に問う。空中で、黒い蜘蛛はわさわさと八本の足を動かした。
「ベリアールサマは詰めが甘いしさ。マステリオンサマは動かないし」
 ふい、と指を振れば蜘蛛は放物線を描いて近くの枝へと引っかかった。
「……みんな怠けてるよ」
「――そう言うでない」
 唐突に聞こえた声アナンシは振り返る。声の主の予想は付いている。
「そんなこと言ったってさあ、ボーンマスター。僕なら絶対ベリアールサマよりも上手い作戦が立てられたよ」
 ボーンマスターは僅かに肩をすくめる。吹いた風がボロボロの裾を揺らした。
「…ベルアール様にはベリアール様の考えがあるのだ。それはマステリオン様とて同じこと」
「納得できないなぁ」
「理解し、飲み込め。そうでなければ識ることはできぬ」
「わからなくったって知っていることは出来るよ」
「では訊くが、お前が知っている兵法の作戦は幾つある?」
「ざっと……200くらいかな?」
「それだけの知恵も、使う場が解らなければ役には立たぬ。どの策が有効か見極めるためには、理解せねばならぬ」
 滔々と、ボーンマスターは語る。
「…………」
「解ったら、付いてこい。マステリオン様が四天王を送り込むそうだ」
「!」
 アナンシは半ば伏せていた顔を上げた。
「やっと動くんだ?」
「そうだ。……戦況も一転するだろう」
「やったね、これでアスタロットサマのきぃきぃ言う声聴かなくても済むよ」
 髪を揺らし、ぴょこんと岩の上から飛び降りて、アナンシはボーンマスターの後を追う。

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2005/12/12
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