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2024/09/23
 神羅

 青い薔薇を求めたのだという。細工物ではない、生きた薔薇を。
 けれどそうして生まれた薔薇は、青く美しかったがとてもとても弱くて、実験室から出すことは出来なかったという話だ。





 彼女の背中には翼が三対生えている。純白のそれは神々しくすらあるのだけれど、どの翼も萎縮したように小さい。それもそのはずで、この翼は風を掴んだことがないのだ。
 大きすぎる魔力故に脆弱な体は、魔力の解放に耐えられない。だから飛べない。
 誰もが畏れ、敬い、讃えるこの翼は、けれど彼女に何の自由も与えてくれない。
 薔薇色の絹地のドレス。綺麗に梳いた髪。細かい輝石と金属を吹き付けて光らせたリボンとレース。真綿にくるむようにして、悪い物は塵一つ存在させない世界。けれど、与えたかったのはそんなものじゃない。
 空を与えたかった。澄み渡る蒼穹を。どこまででも空を駆けてゆける自由を。
 けれど実際に与えられたのはこの地上で一番空に近い城だけだ。細い柱で支えられた回廊は、夕日の長い影が落ちるとまるで鳥籠の影のようで、見る度に痛々しい気分になった。 遠い場所の話をしながらいつか一緒に行こうと言えば、彼女はいつだって頷いたのだけれど、大きな瞳を覗き込むと酷い悲しみと無力感に襲われるのだ。


 そこにあるのは、深い諦めと澄んだ絶望。

 青薔薇は、ガラスケースの外では生きられないと知っている。

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 in vitro は分子生物学用語で「試験管の中で」の意味。対義語は in vivo で生体内、或いは細胞の中で、の意。

 一章四弾以前まででのアルマ姫のイメージはこんなのでした。自由にならないのが何故でどうしてなのか知ってしまっていて、けれど生まれたときからそういう状況であるので、自由にならない憤りや怒りよりは、諦めの感がある。
 視点はお父上かお兄様。どっちでも良いです。


 そういえばサントリーさんの青薔薇は何やら認可を得て発売目指して頑張っているとかいないとか。
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2009/02/26
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