木々深く緑は濃さを増し、連なる岩峰はますます鋭く、人はおろか獣をも易々とは寄せ付けぬ地であった。

　山の化の見せた幻か、或いは深山の霧に精でも宿ったか。いつ現れたとも知れぬ彼の者は、気配だけは希薄なまま、それでもその輪郭の内側には確かな存在感を以て、佇んでいた。
　ここは人の子やましてや鬼の来るような所ではないと、言った彼の者の、白い肌白い尾に黄昏色の角、石と同じくらいの歳月を経た、赤瑪瑙のような瞳だけがやけに赤かった。

　その辺の石ころよりは長い時間を生きられそうな人と。
　……800万はなくとも100万くらいなら……なんとか……
　地形が変わって海が無くなってしまったので居を移しましたお狐様姉弟と、羅震鬼の誰か。
　双方にとってお互いが鬼。