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2024/09/23
 神羅

 軍師というのは超弩級のマゾなんじゃないか、とシェイドは密かに思っている。
 神経質なほどの几帳面さを伺わせる、塵一つ染み一つ無い真っ白な手袋。その中指で、逆光で光る眼鏡をくいと押し上げる様子なんて、どこからどう見てもドエスだというのは、シェイドだって異存はないが。

 けれど、毎日毎日上がってくる数字を睨んで、地形と天候と兵力と兵糧と、些細な報告を頭の中でパズルのように組み上げて。
 相手の考えを、想像して、想像されて、読んで読まれて頭の痛くなるようなスパイラルの果てに導き出した結論には、正解・不正解の評定を理屈で下してくれる存在なんてどこにも居ない。確かめる方法はただ一つ。実際戦場で試してみるだけ。
 正解だったなら、生き延びる。けれど間違いだったなら。
 報告にあった数字は正しいか?自分の考えは正しいか?計画通りに人が動いてくれる保証は?もしも情報が漏れていたら?
 薄氷を踏むような、綱渡りをするような、どこにどうやって足を下ろせば安心なのか。区別の付かないスリルに日夜苛まれながら、それでも正気で生活しているなんて、よっぽど神経が太いか、マゾか、或いはもう狂っているかだ。
 セツナがこのうちどれに当てはまるかと言ったら――


「――どうしました? シェイド」
「いえ、何でも」
 慌てて思考を切り離し、遅れた歩調を少し早めて、シェイドは前を行く少年へと追いつく。赤い鳥に似た翼を負う少年の、柔らかそうな金髪に隠された輪郭と、未だ幼さを残した顔立ちは中性的な雰囲気を醸しだしており、微笑むと少女と勘違いしそうだ。
 王、と名乗るには随分可愛らしいが、気は抜けない。何しろこの少年も、有能な軍師なのだ。見た目のように可愛らしいヒヨコで終わるわけがない。

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 飛天にはシェイドさんみたいな翼に対する偏見とかあっただろうけど、シェイドさんにだってそういうのがなかったわけではなくて。
 お互い頑なな頃もあればいい。
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2009/12/06
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