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2024/09/23

 長い指のうち、人差し指から薬指までを、ふっくらした小さな手が握りしめていた。
 ぷくぷくした手の彼女の背丈は、握りしめた指の主の半分もなくて、それでも強がるように時折鼻を鳴らしながら、真っ赤な顔をごしごしこすっている。
 その手を引いて歩く長身の彼は、気を遣っているのか少しだけ女の子の側の肩を下げている。姿勢の良い彼には少し辛いかも知れない。
 人混みの中、ざらついた石畳を歩いていた二人は、やがて小さな建物の前で立ち止まる。
 彼が硝子張りの戸を叩くと、中から制服を着た女性が出てきた。軍服とは違う、ちょっと青みがかった制服。
 婦警さんは彼と二言三言言葉を交わしてから、しゃがみ込んで足下の女の子と目線を合わせた。何事かを女の子に言うのだが、女の子は泣きやまない。握りしめた手に力が加わったのが解る。
 彼が困ったように女の子を見下ろしている。こういう所は気が利かないなぁと思っていると、婦警さんがまた何かを言う。明るく微笑んで、優しげに女の子の手を握った。
 声は聞き取れなかったけれど、それでやっと女の子は口を開いた。ぽつりぽつりと何かを喋る。
 長い指を握った手がほどけて、彼は下げていた肩を元の位置まで戻した。
 婦警さんが女の子の手を引く。まだベソをかきながら交番の中に入っていく女の子は、戸が閉まる前に振り向いて、彼に手を振った。
 彼は相変わらず少し困った顔を無理矢理に笑顔の形にして、手を振り返した。


「――面倒見良いとこあるじゃん」
 後ろから声をかけたら、あからさまに見られた、という顔をされた。
「見てたんですか、君」
「そりゃもうばっちり最初から最後まで」
「替わってくれれば良かったのに」
 君の方がよほど慣れているでしょう、少しだけ不満そうな調子の声は聞き流す。
「子供好きじゃないの?」
「嫌いですよ」
「何で」
「扱いづらいからです」
「の、割にはちゃんと面倒見てたみたいだけどー」
「だから嫌いなんですよ」
「……どういう意味?」
「さて」

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髭と迷子と逆毛。

 ギーファは子供は別に好きでも嫌いでもないんだけれど。
 扱いが解らなくて、苛々するから嫌いだと思っていると思う。
 無駄に几帳面な性格が災いして、世話焼いてしまうから尚更。
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2008/01/29
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