こういう言い方は非常に不本意なのだが。
「……確認するけど、俺は一遍お前を振ってるよな?」
「……そうなるな」
それには多少思うところがあるのか、僅かな間をもって発された返答に、ランビリスは密かに安堵の息を吐く。この前の一件で、どうやらこの王子様には多少ずれた、というか欠けたところがあるらしいことが解ったので、もしかして振られたことさえ解っていないのでは、なんて疑念に駆られていたのだが、そういうわけではないらしい。
「なら、望み薄の薹の立った男に執着するより、もっと若い女の子でも見つけようって思わ、な……」
言いながら気付いた可能性に、思わず語尾が途切れがちになる。
――差別するわけではないが、仮に男にしかそういう興味がないのだったら、これはデリケートな問題である。あまりとやかく言うべきではない。
おそるおそるミュルメクスの方を伺うと、こちらを注視している深い青の視線と眼があった。何故かふとその視線が緩む。
「――嫉妬などせずとも、男を好きになったのはお前が初めてだ」
何か今とんでもないことを聞かされた気がする。いや、気がするだなんて言い方で現実逃避している場合じゃない。
「いや、今のはそういう意味じゃなくてだな……!」
慌てて言い募るが、ミュルメクスの微笑は深まってゆくばかり、むしろ微笑の域を抜け出て完全な笑いになっている。
そこでようやく気付いた。
「解りにくい冗談は止してくれ……」
どこまで本気でどこまで冗談だったのかは解らないが、とにかく自分は遊ばれている。息を吐いて半分乗り出すようだった姿勢を正すと、ミュルメクスもようやく真面目に答える気になったのか笑みを引いた。
「まあ、今はお前以外に眼を向ける気にならないというのもあるが、」
……今度はどうやら本気らしい。頭痛がしそうだ、とランビリスは思う。いや、実際はまったくそんな兆候はないのだが、気分として。
「エフィメラは美しいだろう?」
「……は?」
脈絡のない発言に、ランビリスは思わず問い返すが、ミュルメクスはそれ以上語る気はないらしい。
「あー……それはつまり、」
美女は見慣れている、という事だろうか。
確かにあれ以上の美人はなかなか居ないが。いやそうじゃなくて。
「いや、女を選ぶ基準は見た目だけじゃないだろ?」
「そうだな。見た目で選ばなくて良いなら、性別で選ばなくても良いと思わないか」
王子様は色々な意味で格が違った。
まさかそう返されるとは思っておらず、言葉に詰まったランビリスが反論を模索するのを、ミュルメクスはうっすらと笑みを浮かべて眺めている。ランビリスは、些か複雑な気持ちで、意地とたちの悪いそれを睨んだ。
こんなやり取りをするようになったのは、ごく最近のことだ。あの一件があって、ランビリスが少しはまともな受け答えをするようになり、ミュルメクスがランビリスの反応を意識するようになり、
(……前より笑うようになったんだよな、こいつ)
ランビリスが以前よりミュルメクスの様子を気にするようになった所為もあるにはあるのだが、それでも確実に頻度が上がった。どうも情緒面に関して問題のあったミュルメクスのこの変化は、喜ばしいものではあるのだが。
(それでも、どうもその原因が自分だってのはなぁ……)
自分のやったことが、彼を良い方向に変えたというならそれは構わない。構わないが――どうにも今の状況は、ランビリスが居てこそのものではないか、という気がするのだ。
もし、ランビリスがミュルメクスを好いていて、一生とは言わないまでも、長く彼の傍にあることが出来る、というのならばそれでも構わないのかも知れない。――だが現実はそうではない。
(荷が重いよ、俺には)
だから――本当に、自分以外の誰かを、好きになってくれれば、良いのだが。
「……確認するけど、俺は一遍お前を振ってるよな?」
「……そうなるな」
それには多少思うところがあるのか、僅かな間をもって発された返答に、ランビリスは密かに安堵の息を吐く。この前の一件で、どうやらこの王子様には多少ずれた、というか欠けたところがあるらしいことが解ったので、もしかして振られたことさえ解っていないのでは、なんて疑念に駆られていたのだが、そういうわけではないらしい。
「なら、望み薄の薹の立った男に執着するより、もっと若い女の子でも見つけようって思わ、な……」
言いながら気付いた可能性に、思わず語尾が途切れがちになる。
――差別するわけではないが、仮に男にしかそういう興味がないのだったら、これはデリケートな問題である。あまりとやかく言うべきではない。
おそるおそるミュルメクスの方を伺うと、こちらを注視している深い青の視線と眼があった。何故かふとその視線が緩む。
「――嫉妬などせずとも、男を好きになったのはお前が初めてだ」
何か今とんでもないことを聞かされた気がする。いや、気がするだなんて言い方で現実逃避している場合じゃない。
「いや、今のはそういう意味じゃなくてだな……!」
慌てて言い募るが、ミュルメクスの微笑は深まってゆくばかり、むしろ微笑の域を抜け出て完全な笑いになっている。
そこでようやく気付いた。
「解りにくい冗談は止してくれ……」
どこまで本気でどこまで冗談だったのかは解らないが、とにかく自分は遊ばれている。息を吐いて半分乗り出すようだった姿勢を正すと、ミュルメクスもようやく真面目に答える気になったのか笑みを引いた。
「まあ、今はお前以外に眼を向ける気にならないというのもあるが、」
……今度はどうやら本気らしい。頭痛がしそうだ、とランビリスは思う。いや、実際はまったくそんな兆候はないのだが、気分として。
「エフィメラは美しいだろう?」
「……は?」
脈絡のない発言に、ランビリスは思わず問い返すが、ミュルメクスはそれ以上語る気はないらしい。
「あー……それはつまり、」
美女は見慣れている、という事だろうか。
確かにあれ以上の美人はなかなか居ないが。いやそうじゃなくて。
「いや、女を選ぶ基準は見た目だけじゃないだろ?」
「そうだな。見た目で選ばなくて良いなら、性別で選ばなくても良いと思わないか」
王子様は色々な意味で格が違った。
まさかそう返されるとは思っておらず、言葉に詰まったランビリスが反論を模索するのを、ミュルメクスはうっすらと笑みを浮かべて眺めている。ランビリスは、些か複雑な気持ちで、意地とたちの悪いそれを睨んだ。
こんなやり取りをするようになったのは、ごく最近のことだ。あの一件があって、ランビリスが少しはまともな受け答えをするようになり、ミュルメクスがランビリスの反応を意識するようになり、
(……前より笑うようになったんだよな、こいつ)
ランビリスが以前よりミュルメクスの様子を気にするようになった所為もあるにはあるのだが、それでも確実に頻度が上がった。どうも情緒面に関して問題のあったミュルメクスのこの変化は、喜ばしいものではあるのだが。
(それでも、どうもその原因が自分だってのはなぁ……)
自分のやったことが、彼を良い方向に変えたというならそれは構わない。構わないが――どうにも今の状況は、ランビリスが居てこそのものではないか、という気がするのだ。
もし、ランビリスがミュルメクスを好いていて、一生とは言わないまでも、長く彼の傍にあることが出来る、というのならばそれでも構わないのかも知れない。――だが現実はそうではない。
(荷が重いよ、俺には)
だから――本当に、自分以外の誰かを、好きになってくれれば、良いのだが。
だんだん「好きって言われて困る」理由がシフトしてきてるバリ。
黒プリにはサクサクバリを絆していってもらいたいものです。
この辺とかスクリューのネタを書くために、今まで黒プリは極力前面からの接触とか笑顔とかの描写を控えめにしてきたんですが、……ああ、やっと解禁できて嬉しい、というか楽しい……
黒プリにはサクサクバリを絆していってもらいたいものです。
この辺とかスクリューのネタを書くために、今まで黒プリは極力前面からの接触とか笑顔とかの描写を控えめにしてきたんですが、……ああ、やっと解禁できて嬉しい、というか楽しい……
PR
( 2010/06/17)
ブログ内検索