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2024/09/23

「それが容認できないと言っているのです!」

 苛烈なアクアブルーの眼を至近で見つめ、グロッシュは唐突に、笑いたくなった。
 自嘲ではない。ただ、その、眼の烈しさと一途さが。
 可愛い、なんて言ったら怒るのだろうけれど。
 それも面白いかな、と思いながらグロッシュはふ、と肩の力を抜く。痛覚刺激は断じて受け容れられないが、まあ、沸騰しそうな彼女の気が済むなら、一発くらいは。
「かわいーなぁ、あんた」
 ふと漏れた呟きに、襟首を掴んだ手が、一瞬緩んだ。瞳の苛烈な色が僅かに薄れて、思い切り寄った眉が少しだけ開く。それを見たら本当に変に浮かれた気分になって、するすると妙に素直に言葉が漏れた。
「そういうトコ、嫌いじゃない」
「なっ……!」
 今度はいきなりぎゅ、と襟が閉まる。げ、と思ったのも束の間、いきなり突き放すように開放されて、グロッシュは一瞬よろめく、が別にさほど長く締まっていたわけでもないし、押されたときの力も強くはなかった。一瞬足下をふらつかせたものの、転ぶには至らない。
「そんな……そんな誤魔化しは聞きたくありません」
「本気だぜ?」
「ふ……っ」
 巫山戯るな、と続く怒声を覚悟していたのだが、声はそれ以上続かなかった。
 ともすれば吹きだしそうになる感情を飲み込むように、彼女は拳を握り、俯いて口を引き結ぶ。少し時間が掛かったが、怒らせていた肩がすとんと落ちた。
「貴方がそんなやり方をする人だとは思いませんでした」
 それ以上は何も言いたくない聞きたくないというように、グロッシュの返答は待たず、ユーディアは踵を返して戻ってゆく。


 その後ろ姿がすっかり小さくなってから、グロッシュは大きく息を吐いて、空を仰いだ。
「……あー」
 無意味に声を出す。
 揶揄われた、と思ったのだろうか。
 揶揄われた、と思ったのだろう。
 そう思われるのも当然だろう。思われるだけの態度を取っていた自覚はあるのだ。
 今回ばかりが本気だったところで、今更本気だ、と言えるはずもない。
「……損な性格」
 それが自分へ向けたものなのか、彼女へ向けたものなのかも解らないまま、ぽつりと呟いてグロッシュは自嘲する。
「……ま、自業自得か……」

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 久し振りに黒さ控えめのIギルド玉ネギとパラ子さん。
 ああ、何かやっと真面目にかけ算っぽい話と書いた気がします、この二人。

 男二人しか出てこない話ばっかり書いてると、なんだか猛烈に男女の話を書きたくなります。反動か。
 
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2010/06/17
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