ケン×カナトです。
キスまでしかしてませんが、管理人は割と本気で書いたので、ちょっと描写がねっちょりしてるかも知れません。
苦手な方は回避してください。
キス好きです。良いですよね、可愛くて。今回のが可愛いかどうかは知りませんが。
キスまでしかしてませんが、管理人は割と本気で書いたので、ちょっと描写がねっちょりしてるかも知れません。
苦手な方は回避してください。
キス好きです。良いですよね、可愛くて。今回のが可愛いかどうかは知りませんが。
多分、とっくに臨界点には達していたのだ。
すぐ傍にある人を抱き竦めることは簡単だった。驚いたように瞬いただけで、身構えもしない体を寝台に組み敷くことも。こうして強く触れることに畏れすら抱いていた今までが、まるで嘘のように。
ずっと、こうしたかった。じっとりと胸を濡らす情欲は、一雫ずつ滴り落ちて、いつしか心の内を満たしていた。己の立場と敬愛とを理由に塗り固めていた欺瞞に亀裂が入れば、途端にそれは亀裂を伝って溢れ出す。散々思い詰めて耐えてきた理性はとっくに根元からぐらついていて、もう後は決壊するしかなかった。
息が止まりそうなほどの近くに、鮮やかな緑翠の瞳がある。熱に浮かされたように、ケンはその光を見つめた。
――ずっと、こうしたかった。
胸の内でそう呟くと同時に、だが疑問がするりと忍び込んでくる。
こうしたい、とは。一体自分は彼を――カナトをどうしたい?
「――ケン?」
不思議そうに自分の名を呼ぶ声。まるで危機感のない――優しい人の声。
その瞬間、この欲望に従い続けることが何を示すかを思い出す。この、浅ましい望みを誰に、どんな方法でぶつけようとしているか。
「――っ」
瞬間的に戻った理性の声に従い、慌ててケンは上体を起こそうとする――が、それは叶わなかった。浮かしかけた上体を引き戻されて、一瞬何が起こったのかと混乱する。
そんなケンを見つめ返して、ふとカナトは微笑んだ。己を拘束しているのが背中に回されたカナトの腕だとケンが気付くのとほぼ同時に、カナトが頭を浮かす。鮮やかな緑色が限界まで近付いて、――唇に柔らかな感触が重なった。
閉ざされた瞼を彩る金色の睫さえぼやけるような距離、触れあったそこからは、布越しではない直の体温が伝わってくる。その熱を意識した瞬間――もう止まらなくなっていた。
そんな接触だけでは足りない、というように、薄く開かれた唇から舌を滑り込ませる。まさかそうまでされるとは思っていなかっただろう、驚きにか小さく上がった鼻にかかった声も、今は熱を煽る要素にしかならない。
唇よりもなお熱い口腔を探り、柔らかく滑らかな感触の舌を絡め合う。ゆるゆると這い上がってくる背徳は脳髄にまで染みて、けれどそれすらも毒のように昂ぶりへと――歪んだ快楽へと変わってゆく。口腔を掻き回す度に上がる淫らな水音、つたない口づけで飢えた獣のように、敬愛し、また心の底から欲しいと願った人を貪る。
長い口づけの息継ぎの合間、うっすらと開かれた緑翠の瞳は蕩けたように潤んでいる。艶めいたその仕草にケンはそっと息を呑み、誘われるように襟元へと手を伸ばし―― だが、彼は唐突にきつく手を握って堅く拳を作る。
は、とやっと口づけから解放されたカナトが、乱れた吐息を吐いて見上げてくるのを労ることさえ出来ず、ケンはゆっくりと上体を起こした。緩やかな快楽に侵されたためか、緩んだ拘束を抜け出て、寝台を下りる。
早い鼓動を必死に抑えつけながら、やっと絞り出すように言葉を紡いだ。
「カナト様……」
あの鮮やかな緑の視線がこちらへ向けられているだろう事を解っていながら、ケンは顔を上げられなかった。あの瞳を見たら、今度こそ自分が何をするか解らなかった。
「申し訳ありません……っ」
なんとかそれだけを絞り出すと、ケンは踵を返して足早に部屋を出る。決してカナトのことを視界に入れないように後ろ手に戸を閉めて、――あとは職務さえ顧みず廊下を駆けた。一刻も早く遠ざからなければならないと思った。
ずきりと痛む胸を抱えて、ケンは思う。
カナトを守らなければならない。――この浅ましい己の欲望から。
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( 2010/07/31)
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