忍者ブログ
小ネタ投下場所  if内容もあります。
 [PR]
 

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。




2024/09/23

「あそこが今夜の獲物がある場所だよ」
 闇に溶けるボディスーツに身を包んだクイーンは、眼下を指して言った。スーツこそ体のラインにぴっちりとあった物を着ているが、長い銀髪は流したままだ。開いたハッチの隙間から流れ込んでくる冷たい夜気は、容赦なくクイーンの銀髪を吹き散らしてゆく。
「見えるかい?」
 限りなく白に近いグレーの瞳をこちらに向けて、クイーンは問う。ジョーカーは無言で頷いた。
 二月ぶりの獲物は、業火渦巻く館から救い出されたという大粒のダイヤ。逸話の真偽はともかくとして、久し振りの怪盗らしい獲物だ。ジョーカーの調べでは、予告状の効果で警備は常の数倍は下らない。警戒するべきレベルの人数。
 思わず手に力が入ったところで、くすりと笑う気配がする。
「怖いかい?」
 戯けるように言われた言葉に、いいえとジョーカーは首を振った。幼い頃から格闘の訓練を受けていた彼にとって、いくら人数が多いとはいえ警官の数人ごときは敵ではない。
「じゃあ、緊張している?」
 それにもいいえ、と首を振りかけて、ジョーカーは考える。
「……少しだけ」
 仕方がないね、言ってクイーンは笑う。
 だって今日が怪盗クイーンのパートナージョーカー君の初仕事だものね。
 自動航行になっているトルバドゥールは、徐々に館の真上へと近づいてゆく。街のネオンが微かに届いて、二人の姿を下からぼんやりと照らし上げる。
「行けるかい?」
 風に散らされないように少し強めた声でクイーンが言って、ジョーカーはそれにもちろんです、とできるだけ落ち着いて聞こえるように答えた。
 その強がりを見抜いているのか居ないのか、おそらく見抜いているのだろうけれど、頼もしいね、とクイーンは微笑む。
「じゃあ、お先に」
 その微笑みのまま、ワイヤーを掴んだクイーンはひらりとハッチの隙間から空へと身を躍らせる。自由落下の速度で目標へと向かうその影を、ジョーカーも少し遅れて追った。

拍手




 モース硬度が最も高いと言われているダイヤモンドですが、炭素の結晶なので燃えてしまうというのは有名な雑学ですね。
 まあハーキマーダイヤモンドとかだったら燃えないかも知れませんが、あれは名前にダイヤとついてもダイヤじゃないしなぁ。


 それにしてもうちのジョーカー君は大人しいなぁと思います。
PR



2008/08/09
prev  home  next
ブログ内検索

忍者ブログ [PR]
  (design by 夜井)