「……何か用」
――尾けられていることは解っていた。だからわざわざ、こんな人気のない場所までやってきたのだ。何かあったときに、人が居てはカイにとって都合が悪いというのもあったが、それは向こうも同じだろう。場所を選んでやったのだから、感謝してもらいたいくらいだ。
「――カナト様に近付くな」
振り向いたカイの視線の先、気配だけはカイですら舌を巻くほど希薄に、けれど視線に込められた敵意――それこそ神話の怪物のように、目を合わせただけで呪い殺されそうな――は隠しもせず、カイを追ってきていた相手。
ケンは神具を持ったまま、ただそこに佇んでいる。しかし、今もカイの金色のそれとは違い、ケンの翳りを帯びた鬱金色の瞳には、冷たく鋭い色が宿っていた。
彼の纏う気配を感じながら、カイは考える。
尾行?とんでもない。はなから殺気を隠すつもりもなかったのだろう。これは宣戦布告だ。
「お前に言われる筋合いねーんだけど」
「お前は危険だ」
「へぇ?」
「副会長の言うとおり、お前は放し飼いの虎のようなものだ。カナト様に近づけるわけにはいかない」
紡がれた台詞に、カイは口端を吊り上げる。
「は。そりゃ、不安にもなるかもな。なんたって、その虎がどれだけ危険か、お前は身をもって知ってるんだから」
――尾けられていることは解っていた。だからわざわざ、こんな人気のない場所までやってきたのだ。何かあったときに、人が居てはカイにとって都合が悪いというのもあったが、それは向こうも同じだろう。場所を選んでやったのだから、感謝してもらいたいくらいだ。
「――カナト様に近付くな」
振り向いたカイの視線の先、気配だけはカイですら舌を巻くほど希薄に、けれど視線に込められた敵意――それこそ神話の怪物のように、目を合わせただけで呪い殺されそうな――は隠しもせず、カイを追ってきていた相手。
ケンは神具を持ったまま、ただそこに佇んでいる。しかし、今もカイの金色のそれとは違い、ケンの翳りを帯びた鬱金色の瞳には、冷たく鋭い色が宿っていた。
彼の纏う気配を感じながら、カイは考える。
尾行?とんでもない。はなから殺気を隠すつもりもなかったのだろう。これは宣戦布告だ。
「お前に言われる筋合いねーんだけど」
「お前は危険だ」
「へぇ?」
「副会長の言うとおり、お前は放し飼いの虎のようなものだ。カナト様に近づけるわけにはいかない」
紡がれた台詞に、カイは口端を吊り上げる。
「は。そりゃ、不安にもなるかもな。なんたって、その虎がどれだけ危険か、お前は身をもって知ってるんだから」
PR
( 2010/07/03)
ブログ内検索