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2024/09/23

 廊下を向かいからやってくる人影を認めて、ヴェルガは軽く右手を挙げた。相手は案の定嫌そうに口を曲げたが、方向を変えたり速度を落としたりはせずにこちらに向かってくる。
「よう。やってんなぁ、医者見習い」
「何だよ脳筋。馬鹿専門の外来なら、余所あたれ」
 ワゴンを押すアスターの横に並びながら、ヴェルガは苦笑する。
「別に診療じゃねーよ。お使いだお使い、薬の材料が依頼に出てたの、知らねぇ?」
「……受けるんなら俺が話つけといたのに」
「お前は見習い生だ。院内関係者使って依頼受けるわけにはいかねぇよ」
 不機嫌そうに(どうせポーズだ)しかめっ面をしたままのアスターを、ヴェルガはちらりと横から覗き込む。今日は機嫌悪ィな、と思いながら、彼の押すワゴンに視線を逸らす。ワゴンの上には、何かの箱やら薬品瓶やら、ガーゼに脱脂綿、それから薄い緑の…………
 あ。何となく解った気がして、ヴェルガはおそるおそるアスターの顔を覗き込む。
「……な、もしかして、お前これから手術室行き?」
 ワゴンの上にきちんと畳んでおかれた薄緑色のそれは、多分術衣だ。
 アスターは顔をしかめたまま、こくりと頷く。院内で手術という単語を出すのを憚ったのか、或いはただ単に口に出すほどの余裕がないだけか。常の彼にしては幼い仕草で頷いた彼は、憂鬱そうに息を吐いた。
 切ったり貼ったり縫ったりするのが恐ろしく苦手な彼には、辛い仕事に違いない。
「あー……まあなんだ、頑張れよ」

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2010/04/20
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