「――ここに来た理由ね、」
ひらりと羽織った短外套の裾を翻して、セレスタは振り返る。流石に10年前の身のこなしはないが、それでも充分軽やかな、自由な仕草だった。
傾きかけた日差しは黄金の光を帯びて、ゆるやかに彼女を縁取る。
「ほんとは、勲章渡そうと思ったの」
ぽかん、と絶句した彼の目の前で、セレスタは声を上げて笑った。ひとしきり笑ってから、彼女はおもむろに被った帽子に手をやる。くしゃりと手の中で歪んだ帽子の、その内側に光っているのは間違いなく、エトリアの英雄の証だ。
それをしばらく見つめて、ゼオは口を開いた。
「それは……あんたのだろ、俺が持ってちゃおかしい」
「おかしくないよ。私のでもない。これは「テンペスト」のもの。役に立つんなら、ゼオが持ってたって良いんだよ」
だからあげようと思ってたんだ。言ってセレスタは、指先に引っかけた帽子を二三度くるくると回す。そうして彼女は、でもね、と悪戯っぽく微笑んだ。
「やっぱりあげるのはやめた!これは私がもっておく」
赤毛の頭に帽子を被り直して、彼女は高らかに宣言する。
「これあげたら、今度は私が紋章持ってるあんたの隣に並ぶのがおかしくなっちゃう。だからこれは私の。迷宮上り詰めたら、私の隣に並びに来てよ。凄く楽しみに待ってるから」
ひらりと羽織った短外套の裾を翻して、セレスタは振り返る。流石に10年前の身のこなしはないが、それでも充分軽やかな、自由な仕草だった。
傾きかけた日差しは黄金の光を帯びて、ゆるやかに彼女を縁取る。
「ほんとは、勲章渡そうと思ったの」
ぽかん、と絶句した彼の目の前で、セレスタは声を上げて笑った。ひとしきり笑ってから、彼女はおもむろに被った帽子に手をやる。くしゃりと手の中で歪んだ帽子の、その内側に光っているのは間違いなく、エトリアの英雄の証だ。
それをしばらく見つめて、ゼオは口を開いた。
「それは……あんたのだろ、俺が持ってちゃおかしい」
「おかしくないよ。私のでもない。これは「テンペスト」のもの。役に立つんなら、ゼオが持ってたって良いんだよ」
だからあげようと思ってたんだ。言ってセレスタは、指先に引っかけた帽子を二三度くるくると回す。そうして彼女は、でもね、と悪戯っぽく微笑んだ。
「やっぱりあげるのはやめた!これは私がもっておく」
赤毛の頭に帽子を被り直して、彼女は高らかに宣言する。
「これあげたら、今度は私が紋章持ってるあんたの隣に並ぶのがおかしくなっちゃう。だからこれは私の。迷宮上り詰めたら、私の隣に並びに来てよ。凄く楽しみに待ってるから」
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( 2010/05/01)
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