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2024/09/23

 ゆらりと顔を俯かせたまま、はは、と娘が笑った。
 薄汚れた梔子色の裾と袖を縫い止められたままだというのに、場違いにも笑って見せた娘の反応に、男は僅かにたじろいだようだが、突きつけた刃も圧し殺された殺気も揺らぎはしない。
「残念ですが、こちらは信用商売でございます。一度受けた仕事は幾らお金を積まれようとも動かしませんし、爪が剥がれようが指が落とされようが、依頼主様との決め事は絶対に破りません」
 ようやく間諜としての本性を現した娘の声は、落ち着いて低い。
「聞き出す方法なぞ幾らでもある。――下の里には薬師が居るでな。体に溜まる毒も、意思を無くす薬もたんとあるぞ」
「我等草屈に効くと思うのならば、試してみるのもよろしいでしょう。ですが、――俺から何かを聞き出せるなんて思わない方がいいですよ」
 唐突に口調が変わった。否、口調どころか声さえ変わる。
「俺は、俺を裏切ることが出来ます。でも里を――主命を裏切ることは出来ません。それくらいなら、」
 ふと娘――否、少年が顔を上げた。垂れた黒の前髪の間から覗く睨むような視線、背筋を走った悪寒。刹那、視界の端にちらりと落ちた影に反応して、反射的に振り向きざまに斬り払う。
 仲間すら切り捨てても構わないとでもいうのか、上段に刀を振りかざしていた人影は、眼にも止まらぬ一太刀を受けて声もなく崩れ落ちた。その見開かれたままの紺の瞳にふと違和感を感じる。――苦痛を映さない瞳、見たことのある――そう、この娘の姿をしたシノビと同じ色。
「陽炎……!」
 嵌められた。返す刀で斬りつけるも、間一髪縫い止められたままの梔子色の袖を引きちぎって少年は跳び退る。
 嵌められたことで逆上した男は、だから気付かなかった。
 すっぱりと抵抗無く二つに断ち切れた少年の輪郭が歪んで、幻のように溶け消えた、その影に潜んでいた者が居たことに。その人物がおもむろに低めていた身を起こし、一瞬で抜刀したことに。
 更に追い縋ろうとした瞬間、――頭部に強い衝撃を受けて、男の意識は落ちた。

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 見つかってるからある意味失敗。ポニシノとモブ。微妙に若ショ。

 正直ポニシノに女装させて啖呵切らせたかっただけだったりする。
 ポニシノはそろそろ女装がキツくなってくるお年頃です。
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2010/06/15
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