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2024/09/23

「――シスタ、シスター!」
 煉瓦積みの低い塀を回って亜麻色の髪の少女が駆けてくる、否、少女と言うにはまだ少し幼いかもしれない。年の頃は6つか7つか、その辺りだろうと、リヴェルリは勝手に思っているのだが。
「どうしました?」
「あのねシスター」
 教会の敷地に植えられた強い香りの香草(これは干して物置の防虫剤にする)を摘む手を止めて、リヴェルリはかがみ込んで少女に視線を合わせる。随分急いで駆けてきたのだろう、肩で息をしている少女は、けれどそんなことは気にもならないのか、ほとんど同じ高さになったリヴェルリの濃い茶色の瞳を覗き込むようにして訴えた。
「さっき、坂の所でヤラッカが転んだの。そうしたら立てなくなっちゃって足がすごく腫れて、お兄ちゃんが氷持ってきて、って言うから」
 そこまで言って、彼女は大きなブリキのバケツをリヴェルリに差し出す。
「だからシスター、氷ください」
 差し出されたバケツを見下ろし、ついでリヴェルリは少女を見る。不安と焦燥の漂う表情に安心させるように微笑み返して、リヴェルリは少女にとっては一抱えもありそうなバケツを受け取った。
「解りました。少し待ってくださいね」

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2010/10/21
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