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2024/09/23

「……それで?回りくどく人払いまでさせて、何が話したい?」
 一年前、最後に見たときそのままの尊大さで問われて、シカラは内心苦笑しながら、膝を付いて最敬礼を取った。
「いい。今更宮廷ごっこがやりたいわけでもないだろう」
 言われて顔を上げる。膝を付いたまま見上げた青年は鷹揚というよりは面倒そうな表情をしていて、シカラはうっすらと口端を吊り上げた。
「改めまして。ご壮健のようでお喜び申し上げます、殿下」
「お前は随分窶れたな。病でも得たか?」
「はあ……まあ病と言いますか何というか」
 シカラは曖昧に言葉を濁す。胃痛を病というなら病かも知れないが、その胃痛・不眠その他諸々の原因となった出来事は、元を正せば全て目の前の青年が原因と言えなくもない。だが今日はそんな話をしに来たわけでもないし、文句を言いたいわけでも……いや、目の前の「国を追われた王子」という悲劇的な見出しがいかにも似合わないツヤツヤした様子を見ると、一言くらい言いたいこともあるが。ともかく誤魔化してしまうに限る。これでも大国で官僚をしていたのだ、言いたいことを飲み込むのは得意である。
「……この辺りの気候は、私にはあまり合わぬようでして」
「この辺りは風が乾かんからな」
「ええ。向こうにいた頃にはキツイキツイとしか思いませんでしたが、こうして異国へ来てみれば、案外祖国の冬も懐かしいですね」
「それで、そんなに母国の好きなお前が、どうしてこんな所にいる」
 遠慮の無い、探る視線を向けられて、シカラはふ、と息を吐く。やっとここからが本題だ。
「お聞きしますが殿下。国へ戻るつもりはおありに?」
 青年は一瞬虚を突かれたように瞬いて、だがすぐにその面に不満気な色をにじませる。
「有ろうが無かろうが、戻れる状況ではなかろう」
 シカラは笑みを深める。ならば自分の持ってきた情報は役に立つ。
「どうして、どうして。――宰相殿は、北へ兵を向けるつもりですよ」
「――北」
 その呟きは己へ向けてのものかシカラへ向けてのものか、青年の瞳が僅かに硬質な色を帯びる。
 北、そんな曖昧な言い方ではあったが、二人の脳裏にはおそらく共通の地名が思い浮かんでいるはずだ。今は酷く情勢が乱れていて、遠からず瓦解するだろうと目されている国。
「ええ。お偉い様方は柔軟です、掌を返すと言った方がいいですか。休戦を反故にしてまで攻め入るような旨味でも見つかったんですかね。
 あの国を切り取るというのは、元はと言えば殿下、貴方の言い出したことです。……今なら大手を振ってお帰りになれますよ。それ見たことかと」
「……シカラ」
「はい」
「今の話をしたのは私だけか?」
「勿論」
「ではこれ以上は話すな。誰にもだ」

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 病みゾのシカラさんと黒プリ。

 シカラさんは先見術特化、サブショーグンで、ブレスを防ぎながら属性付き武器で竜を介錯する、三竜戦の専門家です。暇なときは通常星術撃って、ダメージのお手伝いも。
 なので多分、この後こんな会話が繰り広げられる。


「そうですね、お元気にしてらっしゃるか気になったのは事実です。でも貴方がお戻りになったら、私をクビにした連中がどんな顔をするか、それが見たかったというのが本音ですね。……ああ、あとは、今懐が寂しいので。仕事の一つでもあればと思ったのですが」
「残念だな、そういうことはファルファーラに頼め。……いや、お前、確か先見術が得意だったな?」
「はい……いえ、あの、私は浅く広くですから、威力を期待されてもお応えできませんよ」
「火力はいらん。どうとでもなる。……なぁシカラ。竜を見てみたくはないか?」

 病みゾさん一名、三竜戦ツアーにご案内~
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2010/06/29
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