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2024/09/23

 今でも覚えている。
 庭木の蕾の具合でも聞くような、ありふれたさりげなさだった。

「眼を、どうした」
 何故気取られたのだろう。
 今思えばあれもこれも、彼の眼に止まるような不自然さはあったのかも知れない。けれどあの当時の自分は未だその程度の誤魔化しをすることで精一杯で、とっさの怯えを隠すことも出来ず、それでも何とか間を開けずに応えることが出来た。
「何の、ことでしょう」
「怪我か、病か?」
 ああ、つまり今日限りの不調でないことすら覚られている。
 それでも当時の自分は、飲み込みの悪い愚鈍な子供の振りをすることしかできなかった。
「何を指してるのか解りません」
 頑是無く主張する自分に、少年はほんの僅かにだけ眼を細め――それが目の前の少年を凝視しようとするための仕草だったのか、或いは眉を顰めかけて留めた動きだったのかは解らないが――そして、言い放った。
「自覚がないなら医者を呼ぶ」
「!!」
 そのまま片膝をついて跪いていたシノビの襟首を乱暴にひっつかんで、少年は歩き出す。
「わ、離しっ」
「おとなしく付いてくるというなら考えないでもない」
「必要ありません医者なんて」
「惚けているのか本気で解っていないのかは知らないが、原因も解らぬものを放置できない」
「原因も何も、問題なんてありませんっ」
 噛み合ってるのかいないのか不安になるような会話を交わして引きずられながらも、必死に手を振り解こうとするが、元よりこの時期の一歳の年の差と、たゆまぬ鍛錬の差は大きかった。
 一向に外れる気配のない手に引きずられて、木々の切れ目に屋敷の屋根が見え始める。
 あそこにはお抱えの薬師やら医者が居て、いつでも屋敷の一角に控えている。今日も往診の時間でなければ屋敷に控えて、訪れる人々や屋敷内の物を診たり、或いは薬を作ったりしているのだろう。些細な怪我しか診てもらったことはないが、評判の上では名医だ、と聞いている。どんな病をもたちまち見抜いてしまうのだと。
 ひく、と喉が引きつった。
「……お待ちください」
「…………」
「お待ちください、後生ですから」
 懇願すると、ぴたり、と少年の足が止まった。
「眼は……以前、星見の道具でやりました」
 誰にも言ったことがなかった。怖くて言えなかった。
 背後の彼の様子が最前と違うのを察したのだろう、襟を掴んだ手は緩まないながらも、語調に僅かな躊躇いが混じった。
「診せたのか?」
 いいえ、と彼は首を振る。
「でも、左は見え難くなりましたけど、ちゃんと両方見えます。……お役に、立て、ます。眼の所為で下手なんてうちません」
 だから、と彼は絞るように続けた。
「お願いです、黙っててください。誰にも……言わないでください」

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 シノビと若ショー。
 10年とは言わないまでも、8~9年前くらい。
 うちのシノビのサブクラスはゾディアックですと地味に主張。

 シノビは片眼が見えてないんじゃなくて、片眼の視力がもう片眼に比べて弱いです。
 だから両眼をずっと使ってると、先に片眼が疲れてくる。→短刀の命中率低下。
 うちのが補助と接近戦ばっかりやってるのはそういう理由。

 アキツは10年先も20年先も、死ぬまで眼のこと黙ってますよ。
 で、ヤンマの方はいい加減大人になって、もう眼のことバラされたって困らない実力とか経験を身につけても、アキツが黙ってるので自分も黙ってる。
 例えば望遠鏡で遊んでる子供に、太陽とか火とか見ちゃ駄目だぞ、って言って、その後に(おじさんは昔それで失明しかけたんだ)とか言って脅かしたいけど言えない。


 しかしこの主従は、意識してないけどお互い弱みを握り合ってる感じだなぁ……

 カップリングでなくとも、二人組を書いたりするときは、精神的な受け攻めというか、頼り頼られ依存と先導……みたいなのを考えたりするんですが、こいつらの受け攻めは未だよく解らない。
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2010/05/20
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