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2024/09/23

「できる……と言えば出来ますし、できないと言えば出来ないでしょうねぇ」
 ギルドに入ったばかりのシノビは、芋を剥きながら己の主人をそう評した。
「米くらいは炊けると思いますよ。戦場での炊き出しは見慣れてますからね。でも魚の煮付けなんかは出来ないと……いや、ううん」
 抉り出したジャガイモの芽をぽとりと手元に落とし、シノビは首を傾げる。鈍った手元を咎めてメリッサが軽く肘でつつくと、彼はあ、失礼、と言って綺麗に皮の剥かれたジャガイモをボウルに張られた水に沈めた。
「別に、お魚に限った話でなくても良いんですよ?」
「いえ、魚が一番例えやすいですから……煮付けって、こう、煮汁を調合するでしょう。醤油とか、味醂とか」
「はい。白ワインとか、ブイヨンや香草も」
「米酒を使うのも良いですよ。――ともかく、あの調合がなかなか微妙でしょう。慣れれば目分量で作れますけど」
「……私、姫様にお出しするものはちゃんと量ってます」
「あ、それは……ええと、でもこう、適当に作る人は目分量……でしょう?」
「……そうですね。基本の比さえ覚えておけば、そんなにおかしな事にはなりませんね」
「でしょう。でも、アキツ様はその基本の分量ってのを知らないんです。だから作れませんけど……どうしても作らなきゃならなくなったら、あの方は調味料差し引きして試行錯誤してどうにか煮汁作って、調理しますよ。冗談みたいに真面目だから」
「……あの方がどういう性格かは解りましたけど……どうしても煮魚を作らなければならない状況なんて無いでしょう」
「いやいや。仮に、ですよ。『煮魚が食いたい。煮魚をもて』という主命が下ったら、アキツ様は作りますね。そりゃもう間違いなく。で、苦心の末にどうにかこうにかそれっぽいものが出来上がったら、それを進ぜるんでしょう。まあ、それでも作れるものと作れないものとあるでしょうけどね。例えばこの、ポテトサラダなんか無理ですよ」
「何故?理由をお聞きしたいです」
「あの方はマヨネーズの作り方を知らないし、マヨネーズを入れるって事も多分思いつきません」
「……納得しました。じゃあもし、ポテトサラダを作れ、と言われたら、どうなさるんでしょう?」
「うーん……腹切るんじゃないですかね……」

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2010/05/18
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