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2024/09/23

 鎧付きの肘鉄をまともに食らった海賊の一人が、甲板を吹っ飛ばされた先で動かなくなる。それを確認する間もなく、マーコットは最後の一人へと――キャプテンハットを被っているからにはこの船の長なのだろう、つまり海賊の首領だ――短槍の穂先を向けた。
 向けられた方はと言えば、日に焼けた顔の左目を眼帯で覆った男は、鼻筋に大儀そうに皺を寄せ吐き捨てる。
「……誰だァ、こんな巫山戯た野郎を船に入れた奴ァ」
「君らが来いって言ったんじゃない。ご挨拶だなぁ」
 笑って応じるマーコットの構えた槍の穂先は微動だにせず、男もだらりと右手に剣を提げたままだが、赤毛の下から覗く右目には隙がない。はん、と男は皮肉気に鼻を鳴らした。
「俺等がお呼びしたなァお姫さんだぜ? それが蓋を開けて見りゃあ、キレイなツラしてるが男とはよ」
「君らだって本人が来るなんて思ってなかったでしょ? 影武者が男だったからって、そんなにがっかりしなくたっていいんじゃない」
 首を傾げてみせるマーコットの纏う装甲は、日頃彼が身につけている物ではない。通常の物よりも幾分丸みを帯びたフォルム、表面に施された紋様、細身に作られたガントレット――平均よりは大柄に作られているが、一目見て女物と解る品だ。
 ご丁寧に鎧の下に纏った、上品な色合いのサルビアブルーのドレスが強い海風に揺れる。僅かに――船の揺れと勘違いするほど僅かに、マーコットの肩の位置が下がる。呼応するように、対峙した男の腕が上がる――否、上がりかけた。
「カラブローネ!」
 唐突に上がった少女の声に、男があからさまに舌打ちした。互いに相手から視線を逸らさないまま、マーコットの視界の端、船室の上にぴょこりと海鳥の羽と、続いて少女の頭が覗く。
 日に焼けた黒髪と浅黒い肌は、内陸の騎馬の民だという青年を思い起こさせたが、少女の顔立ちはどことなく彼とは違う印象を受ける。風に散らされて乱れた黒髪の下、焦げ茶色の眼が瞬間的に不安と驚きに揺れた。甲板を巡った視線は一拍おいて赤毛の男と、そしてマーコットを中心に捉える。
 ――瞬間、少女の眼の色が変わった。それまで宿っていたはずの感情の機微が消え失せて、表情にだけ最前の驚きの色を残したまま、少女の唇が何事かを紡ぐ。
(――あ、)
 刹那、ぞわりと背筋を駆け上がったそれは、本能から来る警告だ。
 まずい。これは。
 これは、自分では手に負えない、得体の知れないものだ。
 少女の腕が水平に横へ延びる。その指先に陽炎のような揺らめきが収束し、何某かの形を取ろうとする。だが、
「止せコキネリ」
 ぴしりと甲板を打った声に弾かれたように少女の肩が震え、唐突に陽炎が霧散する。
 なんで、とでも言いたげな様子の少女には左手を振って拒否し、男はゆっくりと剣先を上げた。何処か苦々しげな色を滲ませながらも、今度こそは真っ向からマーコットの視線を受け止めて不貞不貞しく口端を上げる。
「こういうのはお互い一人っきりになってからが楽しいんじゃねぇか。――邪魔すんな」

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 赤パイ&ビーキンギルド加入前日くらいの話。
 ビーキンの蝶々が人相手に振るわれれば、それは必ず殺しになるので、思わず強がって止めた赤パイと、女装ボブファラ。
 いや女装て……公式グラは女の子で常時スカートですけれども。むにゃむにゃ。
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2011/03/05
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