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2024/09/23

「ねえ、この島ってさぁ、溶けちゃわないのかな」
「え?」
 いつもの人を食ったような冗談とは違い、本気で不思議そうな声に、貝を拾った姿勢のままタンジェリンは振り返った。
 曇り空の上から鈍い陽光の差す浜には、様々なものが落ちている。削れて穴のあいた石、流木、角の取れたガラス、深海から浮いてきた貝殻。赤茶色の石ころを、荒れて青黒い波の間へと蹴飛ばして、ツツガはぼんやりと海と空の境を見ている。
「溶けるって?」
「だってここ、砂だらけじゃん。昨日みたいな嵐が何度も来たら、全部海に溶けちゃったりしないのかな、って」
 へし折れた椰子の葉を踊り子がやるようにひらひらと振りながら、波打ち際を歩いてくるツツガを待って、タンジェリンは首を傾げた。
「島が溶けちゃうっていうのは聞いたこと無いなぁ」
「そっか」
「きっと溶けるのと同じくらい、砂が積もってくんじゃない?」
「溶けるのと積もるのが一緒に?どうして?」
「それはわかんないけど……」
 困り顔になりながらも、タンジェリンは両手を開く。薄紫色の二枚貝、色の抜けて白くなった珊瑚の欠片、くるくると巻いた殻に薄茶の線の入った巻き貝。
「こういうのが落ちてるんだから、積もってるっていうのはそんなに間違ってないと思うな」
 納得したようなしていないような顔でツツガがそれを眺める、その後ろから近付いてくる仲間を認めて、タンジェリンは大きく手を振った。
「アクリス!こっちだよ!」
 微かな駆動音と砂を踏む音と共に近付いてきたアンドロの頭の上には、1羽のカモメがとまっていて、ツツガがにやりと口端を上げた。
「何、お前仲良くなったの?」
「カモメだー! あ、」
 嬉しそうに言ったタンジェリンが手を伸ばそうとするが、距離が近付くより先に、カモメは翼を広げて飛び立ってしまう。随分軽くなっただろう頭を傾けて、アクリスが空に飛び立ったカモメを視覚センサで追った。
「タンジェリンは仲良くなれなかったねぇ」
「うっ……ツツガだって仲良いわけじゃないくせに」
「わたし?わたしは仲良いよ?」
「ホントぉ?」
「疑うんだー。いいよ、見せたげる」
 言って、ツツガは椰子の葉を片手に持ち直すと、指をくわえて高く口笛を吹く。高く、僅かに音の高低を交えながら、無人の浜風に乗って波間へと響く音。
 やがて、頭上の鳥影に変化があった。潮風に乗ってゆらゆらと翼を広げていた影が、俄に角度を変えて舞い降り――ツツガの僧衣の腕へと降り立つ。頭上で次々にカモメたちが翼を返すのを見上げて、タンジェリンは思わず感嘆の息を吐いた。
「……凄い。」
「鳥くらいならね。ってか重いなこいつ」
 言いながら彼女は腕を振り上げた勢いでカモメを飛び立たせる。
「ホントに仲良いの?」
「ううん。ちょっと習性利用して呼んでるだけ。まあそっちの方は、ホントに仲良いのかもしれないけどね」
 いつの間にか、飛来してきたカモメをそれぞれ肩と頭に載せているアクリスを見遣って、ツツガは笑った。

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 ほんとは砂浜の荒れた波って、砂を含んで茶色いのかも知れないけど……

 山育ち二人組は、海がとっても珍しい。
 浜に誰もいないみたいなので、おそらく超が付くほど早朝なんだろうなぁ……前日の嵐で温室が壊れていないことに安堵したお花屋さんが、仕入れに行くような時間帯。

 モン子さんのサブクラスはビーストキングです。実プレイでは獣の警戒しか取ってないけど、動物の扱い方とか心得てたらいいな……と。
 赤ウォリは馬とかロバとか、その辺の扱いには詳しいんですけど、ね。

 
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2010/09/16
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