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2024/09/23

 某さんに唆されて書いたうちの子ホモ。

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「せんせいもちゅーしてくれるだろうからって」
 らしいと言えばらしい短絡さに、咎めも訂正の言葉も出ず、とりあえずは浅はかな夜這い魔を膝の上に載せたまま、無言で頭を撫でてやる。こうしてやっている間は、こんな突飛な行動が嘘のように、子供以上に大人しいのだ。
 さて、一体どこで見たのか聞いたのか。
 真っ白な髪に指をくぐらせてやれば、あれほど怖いと言った星明かりに照らされてうっすらと光沢が浮かぶ。
 幾らシュトラが常識外れの行動を取ることが多いと言っても、今回は少々質が違う。何処か別筋から吹き込まれたと考えた方がいい。どこから。
 手遊びにも似たことを繰り返しながら考えれば、心当たりはすぐに浮かんだ。
 金髪。術師風の服。あのどこか乾いた、いやらしい笑み。あいつか。
 こんなことをするということは、矢張りあの時、何かに気付かれていたのだろうか。嫌な汗が滲んだが、それよりは余計なことを吹き込んで、こんな煽るような真似をして、と苛つきが過ぎる。こんな事を余所でやったらどうするつもりだ。もし、やらせるつもりで吹き込んだのだとしたら許せない。……否、そこまで悪意があるようには見えなかったが。
 到底真意の見えない憶測を続けるのも億劫になって、結局溜息で思考を吐き出す。重たいそれは床に落ちて音もなく霧散しただろう。
「お前がやりたいのは、こういうことじゃないだろ」
 言葉に出せば何処か虚しいそれに、相手はあどけなく首を傾げる。
「おれはせんせいとキスしたいよ」
「違うよ」
 大人気なく頭ごなしに否定して、フェゼントは少しだけ髪を梳く手を後頭部へとずらす。
 違うのだ。こいつの気持ちは、そういう種類の物じゃない。だがこいつはそれが解っていない。言葉で幾ら言ったところで伝わる類のものじゃないだろう。両方知って、比べてみなければ判るはずもない。
 ならば。
 いくら普段から剣を振るっているとはいえ、隙を突くのは簡単だった。特に相手が自分だったなら尚更だろう。
 立ち上がりざま姿勢を崩したシュトラの腕を引いて、寝台に押しつけた。フェゼントの腕力では上半身だけ引き上げるので精一杯だったが、まずはそれで十分。反射的に藻掻いた手首を縫いつけて、殆ど体重を掛けるようにのし掛かる。
 肺が圧されて僅かに漏れた苦鳴に続く声が上がる前に、唇を塞いだ。強引に薄い唇にねじ込み、いっそ暴力的に探り当てた舌を絡め、唾液を吸い上げる。
 奪うように、侵すように。粘膜の温度をはっきりと伝え、甘ったるいふわふわした夢なんて塗り替えてしまうようにわざとらしく水音を立てた。触れあった場所の温度が均一になったような錯覚を覚えた頃、フェゼントは身体を起こした。さほど長い時間ではなかったはずだ。それでもまるで試されているような居心地の悪さは、数分にも満たない時間を随分と長く感じさせた。
 驚いただろう、殆ど動きを止めて瞬くだけのシュトラに、フェゼントはやっと吐き出すように言葉を落とす。
「俺とこういうことしたいの」
 違うんだろうそれは。
 食べられてしまう恐怖を少しでも知ったならば違いに気付け。
 思慕と恋慕は同じじゃない。
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2012/08/30
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