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2024/09/23

 ねえ、と彼女は囁く。
 都市には分厚い海水を通した仄暗い光が注ぎ、夜は星の光も届かない青い闇に閉ざされた。上の天候次第では、日の光は一切届かず、昼でも夜と同じような闇があちこちにわだかまる。そんな日には僅かに棲まう肉持つ人々のために、エーテルのランプが灯された。

この都で時を告げるのは太陽でも鶏でもなく、神殿に備え付けられた星時計だった。
低い海鳴りと、密やかな海流の流れ。それらに異質に混じる、歯車の擦れる音。ゆっくりと回る巨大な金属の環。

 ねえ、と微かな声で彼女は囁く。
 心ってどこにあると思う?私は一体この体のどこに居ると思う?魂とか心とか呼ばれる物はどこに収まっているのかしら。心臓?脳?それともこの体全部にばらまかれているのかしら。そうしたら、あなたは私のどこまで愛してくれる?

 寝台の上で身を寄せ合って、微睡みに意識を浸しながらそんなことを語る。
 彼女の語ることの半分は俺には理解できない。けれどそう言うと、彼女はそれで良いわ、と静かに言う。

 心臓が止まってしまっても、すぐに体全部が死んでしまうわけではないわ。呼吸が止まれば脳は死んでしまうけれど、血液に溶けた酸素が数時間は臓器を生かしてくれる。筋や皮膚が死んで腐るにはもっと時間がかかるわ。
 ねえ、私の魂がこの体全部に宿っているとしたら、私が本当に死んでしまうのはいつ?
 この体に埋め込んだ機兵のパーツにも、魂は宿るかしら?

 悲しい話に俺は答えることが出来なくて、彼女はそれでも、仕方ない人、と密やかに笑う。

 海の底に沈んだ都、時を止めた街で、本当に時が止まればいいのに。

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 本当はSQ3、2本目ROMを買ったら作る予定の海都派ギルドの話なんですが。
 これは既に紆余曲折経た後なので、頭の中にある雰囲気と違うんですよね。

 少し雑談。
 ES細胞ってあるじゃないですか。多能性幹細胞ってやつ。あれは胚からしか取れない→取るには胚を壊さなければならない→つまり生命を殺さなければならない ってことで欧米で非常に問題になっています。
 しかし日本だと、その点はそんなに問題にはなってないんですよね。欧米では、「受精卵は既に一つの生命である」という考えを持った方が多いらしいのですが、日本じゃ正直「こんな細胞塊まで生命と見なすのか?」とそんな意見が多い。
 いやまあ、私が統計取ったわけでもないから、多いと言われている、が安全か。欧米は生命の発生について、非常に厳格なのですね。
 その点、日本はもっとラインが甘い。まあ日本に限った話ではないですが。じゃあ日本は生命倫理に甘いのか?と言ったら全然そんなことはない。日本は厳しい場所が違うのです。
 欧米が生命の「始まり」に厳しいのに対して、アジア諸国は「終わり」に厳しい。
 その辺は脳死移植に顕著です。例え脳が死んでいても、まだ心臓が動いているじゃない、温かいじゃない、これを死と判断するの?という、そういう認識なのですね。どこからを死とするかに非常に厳しい。
 どこから始まってどこで終わるのか、って、たったそれだけのことなのに全然認識が違うのは興味深い話だと。
 一応申し上げておきますと、この辺は尊厳問題だと考えておりますので、私はどちらが正しいとか非合理とか言う気はさらさらありません。
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2011/11/05
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