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2024/09/23
 Fiends

 遙か昔にこの地で朽ちるはずだったという男は、まるで幽鬼のような姿で眼前に立っている。

 しゃきん、まるでふざけているような軽い音が、アクベンスの握る鋏の先で鳴る。半ば仰け反るようにして半歩退いた男を、更に左の鋏が追った。凶悪な金属の顎が閉じられる、寸前に男は背後へ跳んで逃げる。
 水飛沫を上げて着地し、片膝をついた男は、次の瞬間には既にその手に雷の矢をつがえている。
 矢の間合いには短く、一気に踏み込み刃を突きつけるには些か長すぎる距離をおいてにらみ合う両者の間に、逃げ遅れて断ち切られた青い髪が数本舞って、水面へと落ちていった。
 男の手の中で、雷は矢の形を取ったまま弾けるような音を立てている。特別な鋼で出来た弓を握る腕は、狙いを定めたまま――そう、眼前のアクベンスへと定めたまま微動だにしない。
 だが不用意に動けないのはアクベンスとて同じだ。あの雷光の矢は一つ受けただけでしばらくの間身動きできなくなる。だが、一矢撃たせてしまえば、次をつがえる前に、相手は踏み込んだアクベンスの殺傷圏にはいる。そのためにはなんとしてでも一撃を避けなければならない。アクベンスは眼前の男に集中する。
 日に焼けた風の肌は、青白い雷光が映りこんで褪めた色に染まっている。不穏な風に煽られる布地の多い装束は、今では書物の中にしか見られない酷く古風なものだ。現実味のない光景の中、表情を消した男の顔の中で、唯一瞋恚を宿した瞳は雷光を映し、この世の者ではないかのように爛々と光る。
 ――幽鬼のようだ。
 そう、既に「ないもの」として扱われていた遙か古の亡霊が、アクベンスの前に立っている。
「……髪の次は右腕がいいか左腕がいいか、それとも首から落としてやろうか」
 何かしらの動きを誘うべく問うたアクベンスに、だが思惑に反して男は不快がる様子も見せず、逆にアクベンスを挑発するように口角を吊り上げた。
「……は、既に亡い皇帝の命に従うだけの亡霊が、随分大した口を利くではないかね」

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Fiend:鬼、悪魔、残忍な人、中毒者、特定分野の熟練者、マニア。


 皇導十二星卿戦、ミロクVSアクベンス、です。
 ミロクさんが怒っているのはインドラさん関係が原因。
 ミロクさんばっかりバトらせてごめんなさい。いやだってこの人は矢をつがえる様が一番絵になると思うんです。
 

 正直蟹の人を書いてるのなんてうちだけなんじゃないかという気がしています……アクベンス×ミロクて駄目ですか……?
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2009/05/10
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