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2024/09/23

「――けれど、」
 俯いてたままの少女に、ミロクは語りかける。面倒な説得をする気はないから、ただ真実だと思うことだけ口にする。

「今彼が考えを決めるのに必要なのは、私達ではなく君だよ」

 悔しいことにね、最後の言葉だけは呑み込む。
 嫉妬と呼ぶにはあまりに諦観めいた、それは一抹の寂しさだった。
 自分達は常に側にあることは出来ても、畢竟、彼の傍らにあるには相応しくはないのだ。戦場に赴く鬼の性を伴侶にするほど、彼は修羅ではない。
「行っておあげ。同じ魂を持つ君が、彼の側にいなくてどうするのかね」
 後半はどうにも締まらない理屈だとは思ったが、あえて飄々としたまま口に乗せる。それが例え屁理屈だろうが、理由があった方が人は動きやすい。そう、ミロクもメリルにマキシを追って欲しいのだ。迷いも悩みも、すぐに答えを見つけることばかりがよいとは限らないことは知っている。けれどマキシの悩みを解きたいのは、結局ミロクも同じなのだ。
 そら、言って空いた片手を小さく掲げる。掌に、指に、ぱちぱちと小さな雷が生まれる。小さな花火のように光ったそれは、やがて彼が射る矢のようにひとところへ――今回は、彼の掌の上へと収束して、小さな光球になった。足下を照らすのにはもう少し大きい方が良いが、あえて蛍のような大きさにしたのは彼の趣味だった。季節外れではあるが、これくらいは良いだろう。
 それはふわ、とミロクの手を離れて、木々の合間の闇と、メリルとの間で旋回する。
 少女はそれをやや戸惑ったように見つめていたが、やがて、火の番をお願いします、と言って、闇の中へと向かっていった。
 木々の合間へと消える直前、あ、と少女が振り返る。
「明かり、ありがとうございます」

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 明らかに夏に書いた方がよさ気な話ですけれども……神獄は一体どういう季節の話なのですかね。
 …………あ、なんだか一弾の皆さんの服装を見ていると、夏なんじゃないかって気がしてきました……

 ええと、蛍火から続いております、一応。
 なんだか拙宅のミロクさんはマキシ様がとても好きなようです。

 ほんとうはこの間のシーンも書くつもりだったんですが、なんだか追い立てられているときは落ち着いてものを書けないようなのでとりあえず投下。


 ……この話のちょっと前に、

「――追わないのかね?」

 そわそわと落ち着きのない少女に声を掛けると、彼女は物思いにでも耽っていたのか、びくっと肩を跳ねさせて振り返った。
 それがあんまり絵に描いたようだったので、ミロクは片手で煙管をくゆらせながらくつくつと笑う。
「そう驚かずとも、別に取って喰いはしないよ」
 私はあの赤毛の男とは違うのだ、と付け足すと、やっと少女はくすりと笑った。
 それに少しだけ表情を緩ませて、ミロクはかつ、と盆の縁で煙管の灰を落とす。
「追いたいのなら追ってゆけばいい」
 言うと、少女の表情が曇った。
「……でも、私」
 言い淀んでから、ぽつりと少女は言葉を落とした。
「……神様のお側にいて、良いんでしょうか」
「奇妙なことを言うね。君が側にいなければ困るのは彼だろう」
 実際、彼女が側にいなかったから、ミロク達が力を貸すような事態になったのだ。マキシに協力することに否やのあろうはずもなかったが、やはりそんな危険な状況になるのはいただけない。


 ってこういうシーンが入るはずでした。
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2009/01/28
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