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2024/09/23
  蛍火

 マキシ様が戻ってこない。

 小さく焚かれた火の側で、メリルは所在なげに手を組み合わせる。
 ゼロニクスと二人きりでの話から戻ってきてすぐに、彼はキャンプから離れていってしまった。何を話したのかは知らない。気になったけれど、彼のとても難しそうな表情を見たら訊けなくなってしまった。巫女であり、今は精霊達の力も借りることが出来るメリルには、彼がそう遠くない場所にいることが解るのだけれど、あの表情を見た後では追うことも躊躇われた。
 本心を言うのなら、追いたい。
 だって、きっと神様は悩んでいる。自分では悩みを解く助けにはならないかも知れないけれど、寄り添うことは出来るのだ。今まで祈りを捧げてきたように。
(……でも、)
 行く資格が、あるだろうか。
 自分が攫われたことで、多分彼は酷く傷ついたはずだ。最初に間に合わなかったという負い目からか、彼はメリルをとても大事に扱ってくれる。けれど、二度目もメリルは自分を守れなかった。
 そう思うと、彼の元へ行くのは果たして正解なのだろうか、そんなことを考えてしまう。
 メリルは振り返る。ずっと炎を見つめていた眼には木々の影が見えるだけで、その向こうは塗りつぶしたような闇だ。この向こうにたった一人で彼が居る。

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2009/01/28
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