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2024/09/23

「月見にしては浮かない顔だね」
「……何の用だね」
「今日は随分邪険だなぁ。用はないけど、強いて言うなら君が落ち込んでるかと思って」
「……慰めのつもりなら、酒でも持参したらどうだ」
「嫌だよ、泣かれたら困るじゃないか。僕はそんなのはごめんだ」
 羽毛の軽やかさでミロクから少し離れた屋根の上へと降り立ったホルストは、そう言って冗談めかして笑う。
「それに、僕は君がここで大人しくしているかどうか見に来たんだ。酒精なんて与えたら、また勝手をしそうな奴に、そんなサービスは出来ないよ」
 先刻のことを持ち出されて、ミロクは不機嫌そうに小さく鼻を鳴らす。
「気を揉まずとも、マキシと姉上に止められて、言うことを聞けぬほど身勝手ではないさ」
 ミロクはそのまま姿勢を崩して、屋根の緩い傾斜の上で寝転がってみせる。
 留められたからという理由もあったが、実際の所、ミロクは今ひどく疲弊していて、何をする気にもならないのだった。
 一時体中を支配した眼も眩むような怒りは、袖の上からでも伝わってきた、腕を掴んだマキシの体温だとか、悪友達の短慮を責める言葉や帰りを喜ぶ言葉で、なんだかすっかり醒まされてしまった。
 自分だけではどうにもならなかった猛烈な感情が去ってみれば、後に残ったのは怒りに燃え尽きた分すり減った気力で、ミロクはひどく疲れてしまったのだ。
 怒りの種はけっして消えたわけではないのだけれど、今は燃やす物もない。
 なら良いけど、言ってホルストはミロクに近づいてくる。ほんの数歩分しかなかった距離はあっという間に縮まって、ミロクはホルストに覗き込まれる格好になった。
「とりあえず、また君がいつか考えなしな事を起こす前に、一つ言っておこうと思うんだ」


「君が死んだら、僕は君の事なんてきっと忘れてしまうよ」


 まるで今までの冗談の一部のような軽さで落とされた言葉に、ミロクは思わず視線を上げる。
「解放されてすぐの頃の話は話しただろう?僕はね、あんなに良くして貰ったのに、もうあの女の子達の顔も名前もろくに覚えては居ないんだ。だから目の前から居なくなったら、君のことだってきっとすぐ忘れる」
「死者のことなど、早く忘れてしまうに限る。私はそれで構わない」
「そういう意味じゃあないんだよ」
 ホルストは首を横に振って、少し言葉を選ぶように考える。
「……僕は君を忘れたくないんだ。だから迂闊に死ぬようなことをしないでくれ」
 落とされた言葉に、ミロクはホルストを見上げたまま瞬いて、……けれど、結局、密やかに溜息を吐いてから、思うのとは別の言葉を吐き出した。
「……それは、あの彼女には言ったのかね?」
「フレリアーナのことかい?言うわけないだろ、恥ずかしい」
 では今の台詞は恥ずかしくないのかとミロクは思ったのだが、この悪友が珍しく真摯な言葉を吐いたのに免じて黙っておくことにした。
「それに彼女はね、君みたいな、風に揺れる柳みたいな性格じゃないんだよ。怒るのだって、何か憑いたみたいに怒るんじゃない。彼女はもっと強くて可愛くて激しいんだ。こんな事言ったら失礼だろう」
「私に対してはだいぶ失礼だな、君は」
 お互い様だろ、言ってホルストはその場に腰を下ろした。

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 追記リンク文字が明らかに何も考えて無くてネタがありませんでした感漂っておりますが。

 カテゴリを神獄にしようかホルミロにしようか、それとも王我を新しく作ろうか悩みましたがとりあえず神獄で。

 メモでの語りと関連して、インドラさんが倒れた後、ミロクさんは仇討ち……ってまだ死んでないですけど、仕返しというか復讐というか。報復をしに行こうとしたんじゃないかと。
 で、それをみんなで引きずって怒って泣き落として止めて、その後、みたいな。



 なんか思ったよりもSSっぽくなったので、気が向いたらちゃんと神羅ジャンルの方へ移動するかも知れません。
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2009/04/05
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