神羅で平安妖怪ものパラレル。
平安、とか言っても「平安っぽい感じ」の場所が舞台なだけで、平安時代・或いは陰陽師やらが活躍した時代の文化的考証はまったくと言っていいほど行われておりません。
パラレルとかそういうの駄目って方は続きを読んではいけません。
師匠とゼクウ様でシオンさんの話をする話。
それにしてもこのパラレルは師匠しか書いてない気がします。
…………おかしいな。最初は陰陽師サイガ様と蜜虫クオンさんが書きたかったはずなんですが。
パラレル内での神様は妖怪の超上位版みたいな扱いです。
地力が落ちると氏神の力も落ちるので、土地を守って安定させてくれる武将やら帝やら英霊には師匠は敬意を払っています。
平安、とか言っても「平安っぽい感じ」の場所が舞台なだけで、平安時代・或いは陰陽師やらが活躍した時代の文化的考証はまったくと言っていいほど行われておりません。
パラレルとかそういうの駄目って方は続きを読んではいけません。
師匠とゼクウ様でシオンさんの話をする話。
それにしてもこのパラレルは師匠しか書いてない気がします。
…………おかしいな。最初は陰陽師サイガ様と蜜虫クオンさんが書きたかったはずなんですが。
パラレル内での神様は妖怪の超上位版みたいな扱いです。
地力が落ちると氏神の力も落ちるので、土地を守って安定させてくれる武将やら帝やら英霊には師匠は敬意を払っています。
都の鎮護と呼ばれた英雄が現世から去り早十数年、都は冷夏と大火で荒れ果ててはいたが、未だその荒廃の影は神域までは及んでいなかった。本来ならば地力が弱まればその地を治める主の力や場の力も弱まるものなのだが、この程度の荒廃はこの地の主の力を弱めるには至らないらしい。相変わらず濃い精気が立ちこめる、都よりも山一つ高い場所にある神域に、今日は来客があった。
「それ故、どの者に預けようか決めかねて居ります」
ぱちり、と盤上に駒を一つ置いての龍神の言に、ふむ、と顎に手をあてたままゼクウは首を傾げた。
「どの者も何も」
随分と古い品であるが、よく手入れされた駒を一つ取り上げ、
「そなたが面倒を見てやればいいのではないか?」
升目の一つに彼は駒を置く。ぱち、とこれまた乾いた小気味よい音がした。
「……簡単に言われますな」
「簡単とは言わないが、出来ぬ事も無かろうよ。乳飲み子でもあるまい」
「私にそのようなことは向きませぬ」
ライセンは龍神である。雷を伴い雨雲を呼び、川の流れを司る、雷と水の神だ。雨を以て地に潤いをもたらすと共に、帯びた二刀と雷で魔と災いを打ち払う武神でもある。
確かに豊穣をもたらす神ではあったが、しかしライセンはあくまで「地を潤す」神である。そこに種を撒くのは人の仕事であるし、稲を病や虫から守り、健やかに育てるのはまた別の神の分野だ。
ライセンは龍神の中では割合大人しい部類に入る神ではあったが、大河の如く淡々としながら、その実雷の如き烈しさを腹の底に秘めている神である。
つまりは母性とは無縁の神なのだ。安産祈願や縁結びは畑違いだ。
例えば娘を持つ母親があったとして、この子が息災で健やかに育ちますように、と願われる神ではあっても、愛らしく育ちますように、と願われる神ではなかった。
……願われれば助力を与えないわけではないが――ライセンは人ならざる者のうちではかなり融通が利く方ではあった――本分ではない事は確かだ。
「なるほど、貴方が童をあやしている図は、確かに珍しいを通り越して面白い」
本気なのか冗談なのか、細い眼を更に細めて朗らかに言うゼクウの、その陣営に切り込む一手をライセンは指す。
「戯れ言で申しているわけでは」
「こちらも冗談ばかりで言っているわけではないぞ。あの童の境遇を思い返してみよ、ライセン。貧しさ故とはいえ母親に捨てられ、今まさに消えゆかんとする、その残りの力を振り絞ってそなたの衣を掴んだのであろう」
「そのような身の上であるからこそ、相応しい者の元で暮らすべきでありましょう」
「そなたは常に苛烈なほど正論を語る。だが正論ばかりが最良とは限らぬではないか」
形勢の悪くなった盤をちらりと見て、ゼクウは言葉を続ける。
「一度母に見放され、こうして拾ったそなたもまた手を放そうとする。童にすれば堪るまい」
「…………」
珍しくも考え込んだライセンをのんびりと見つめてから、追い打ちを掛けるべく、ゼクウは口を開いた。
「それに、師よ」
かつて、ゼクウがまだ人であった頃にはそう呼んでいた。その頃を思い出す呼び方で呼びかけたのは、意図してのことである。
「拾ったものの面倒は最後まで見ろと教えたのは貴方であったではないか?」
「それ故、どの者に預けようか決めかねて居ります」
ぱちり、と盤上に駒を一つ置いての龍神の言に、ふむ、と顎に手をあてたままゼクウは首を傾げた。
「どの者も何も」
随分と古い品であるが、よく手入れされた駒を一つ取り上げ、
「そなたが面倒を見てやればいいのではないか?」
升目の一つに彼は駒を置く。ぱち、とこれまた乾いた小気味よい音がした。
「……簡単に言われますな」
「簡単とは言わないが、出来ぬ事も無かろうよ。乳飲み子でもあるまい」
「私にそのようなことは向きませぬ」
ライセンは龍神である。雷を伴い雨雲を呼び、川の流れを司る、雷と水の神だ。雨を以て地に潤いをもたらすと共に、帯びた二刀と雷で魔と災いを打ち払う武神でもある。
確かに豊穣をもたらす神ではあったが、しかしライセンはあくまで「地を潤す」神である。そこに種を撒くのは人の仕事であるし、稲を病や虫から守り、健やかに育てるのはまた別の神の分野だ。
ライセンは龍神の中では割合大人しい部類に入る神ではあったが、大河の如く淡々としながら、その実雷の如き烈しさを腹の底に秘めている神である。
つまりは母性とは無縁の神なのだ。安産祈願や縁結びは畑違いだ。
例えば娘を持つ母親があったとして、この子が息災で健やかに育ちますように、と願われる神ではあっても、愛らしく育ちますように、と願われる神ではなかった。
……願われれば助力を与えないわけではないが――ライセンは人ならざる者のうちではかなり融通が利く方ではあった――本分ではない事は確かだ。
「なるほど、貴方が童をあやしている図は、確かに珍しいを通り越して面白い」
本気なのか冗談なのか、細い眼を更に細めて朗らかに言うゼクウの、その陣営に切り込む一手をライセンは指す。
「戯れ言で申しているわけでは」
「こちらも冗談ばかりで言っているわけではないぞ。あの童の境遇を思い返してみよ、ライセン。貧しさ故とはいえ母親に捨てられ、今まさに消えゆかんとする、その残りの力を振り絞ってそなたの衣を掴んだのであろう」
「そのような身の上であるからこそ、相応しい者の元で暮らすべきでありましょう」
「そなたは常に苛烈なほど正論を語る。だが正論ばかりが最良とは限らぬではないか」
形勢の悪くなった盤をちらりと見て、ゼクウは言葉を続ける。
「一度母に見放され、こうして拾ったそなたもまた手を放そうとする。童にすれば堪るまい」
「…………」
珍しくも考え込んだライセンをのんびりと見つめてから、追い打ちを掛けるべく、ゼクウは口を開いた。
「それに、師よ」
かつて、ゼクウがまだ人であった頃にはそう呼んでいた。その頃を思い出す呼び方で呼びかけたのは、意図してのことである。
「拾ったものの面倒は最後まで見ろと教えたのは貴方であったではないか?」
PR
( 2009/03/29)
ブログ内検索