鬱蒼と茂った夾竹桃の尖った葉の隙間を、そよりと春の夜風が抜けてゆく。さほど四季のない常春の天界だが、それでも宮殿から東は地上の暦と殆ど同じに花が咲く。温んだ風にか細く混じった声を聞きわけて、磨かれた鋼のような色の髪をした彼は僅かにだけ顔を上げ、歩みを止めた。うっすらと暈を被った月の光が、褐色の肌と、その額に埋め込まれた人ならざる証を照らしている。彼は少しだけ眼を細めた。
遠慮がちにさわさわと茂みの葉を揺らしてゆく風精を呼んで、彼は風を引き寄せる。お呼びとあらばと楽しげに(大体の場合、神の手足となるのは彼等にとって名誉だ)応じた風精は、一瞬風をよく孕む衣装をつけた女の姿を取ってから、その衣を勢いよく翻して、よりにもよって突風を呼んだ。
ごう、という音に、女の軽やかな笑い声が混じる。けれど肉体から発せられていない声は、彼の求める音を掻き消したりはしなかった。
葉擦れの音と風の音、背後にはためく自身の衣装のたてる音に混じったその声を、彼は聞き逃さない。
ほんの僅かな間に風は収まり、なびいていた紫紺の布地もはたりと彼の背中へ落ちた。
未だゆっくりと周囲を飛び回る風精達に小さく礼を言い、彼は声の方向へと足を踏み出した。
遠慮がちにさわさわと茂みの葉を揺らしてゆく風精を呼んで、彼は風を引き寄せる。お呼びとあらばと楽しげに(大体の場合、神の手足となるのは彼等にとって名誉だ)応じた風精は、一瞬風をよく孕む衣装をつけた女の姿を取ってから、その衣を勢いよく翻して、よりにもよって突風を呼んだ。
ごう、という音に、女の軽やかな笑い声が混じる。けれど肉体から発せられていない声は、彼の求める音を掻き消したりはしなかった。
葉擦れの音と風の音、背後にはためく自身の衣装のたてる音に混じったその声を、彼は聞き逃さない。
ほんの僅かな間に風は収まり、なびいていた紫紺の布地もはたりと彼の背中へ落ちた。
未だゆっくりと周囲を飛び回る風精達に小さく礼を言い、彼は声の方向へと足を踏み出した。
ブログで言っていたゼロニクスさんとマキシさんの馴れ初め(違う)を書こうと思ってちょっと冒頭を……気が向いたら続きそうです。でも多分ゆったりペース。
マキシさんが出てくるのは一体いつになるのか。
マキシさんが出てくるのは一体いつになるのか。
PR
( 2008/10/01)
ブログ内検索