行ってしまうの?
記憶の中の姉の声は、いつも柔らかく、寂しいくらいに澄んでいる。
穏やかな羽音と共に降り立った足音がそれ以上近づいてこないので、ルリエルは振り返った。表情を消す必要はなかった。既に決めたことだったから、何の感慨もわかなかった。
リムリエルはいつもそうしているように、ごく微かな微笑みを浮かべて、そこに立っていた。対するルリエルは無表情で、端から姉に応える言葉は持っていない。
無言のまま対峙した二人は、そのまましばし見つめ合った。
やがて口を開いたのはリムリエルの方で、その唇から紡がれたのは、行ってしまうの、と先ほどと同じ、けれど確信の色合いを宿した声だった。
ルリエルは答えない。けれど、それが何よりの肯定だった。
そう、と呟いたリムリエルは、そこで初めて、少しだけ寂しそうな顔をした。
みんな、遠くへ行ってしまうのね。
記憶の中の姉は、寂しそうな声で言う。
(けれど姉さん、)
(あなたの言うみんなや、私の手の届かない高みに登ってしまったのは、)
(あなたなのに)
記憶の中の姉の声は、いつも柔らかく、寂しいくらいに澄んでいる。
穏やかな羽音と共に降り立った足音がそれ以上近づいてこないので、ルリエルは振り返った。表情を消す必要はなかった。既に決めたことだったから、何の感慨もわかなかった。
リムリエルはいつもそうしているように、ごく微かな微笑みを浮かべて、そこに立っていた。対するルリエルは無表情で、端から姉に応える言葉は持っていない。
無言のまま対峙した二人は、そのまましばし見つめ合った。
やがて口を開いたのはリムリエルの方で、その唇から紡がれたのは、行ってしまうの、と先ほどと同じ、けれど確信の色合いを宿した声だった。
ルリエルは答えない。けれど、それが何よりの肯定だった。
そう、と呟いたリムリエルは、そこで初めて、少しだけ寂しそうな顔をした。
みんな、遠くへ行ってしまうのね。
記憶の中の姉は、寂しそうな声で言う。
(けれど姉さん、)
(あなたの言うみんなや、私の手の届かない高みに登ってしまったのは、)
(あなたなのに)
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( 2009/08/02)
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