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2024/09/23
 立埋

 神羅で平安妖怪ものパラレル。
 平安、とか言っても「平安っぽい感じ」の場所が舞台なだけで、平安時代・或いは陰陽師やらが活躍した時代の文化的考証はまったくと言っていいほど行われておりません。

 パラレルとかそういうの駄目って方は続きを読んではいけません。




 相変わらず師匠とゼクウ様とその息子達のお話。
 三人とも故人です(……)。

 ウンリュウさんの陵墓に咲く花精がフヨウさんで、ご兄弟と懇意の中であるとかなんとか。
 フガクさんは生前いろいろあった所為で身内に対して過保護気味とか。
 書ききれなくて悔しかったのでここで蛇足しておきます。

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「私は、貴方が引き取るのが最も上手く納まるように思うのだが」
 半歩だけ前を行くゼクウの後を、ライセンはついて行く。
 客人の見送りは当然であるとするライセンに対して、龍神、しかもかつての師に見送られるのはどうにも落ち着かないとゼクウは毎回一度は固辞するのだが、今の所この件に関しては、ゼクウは一度も説き伏せるライセンを丸め込めた例しがない。
「貴方は向いていないと言うが、向かないだけで不都合があるわけではないのだろう?」
 肩越しに振り返っての問いに、ライセンはいつもの不機嫌とも取れそうな表情で答える。
「……不都合、とは申しませんが」
 不都合、ではない。こちらに都合の悪いことなど一つもない。ただ、感じている懸念を一言で表すならば、理不尽、と言うのが正しいとライセンは思う。
「私は人ならぬ身故」
 それを言うならば眼前のゼクウでさえもそうなのだが、何しろライセンは格が違う。もとより人というのは、訓練でも積まぬ限り、化性や幽鬼の影響を受けやすい種なのだ。妖気に当てられれば身体を壊すし、その身に異変を招くこともある。
 ライセンの気には人を害する類の力はなかったが、それでも龍神の気は人には強すぎる。ここに長く留め置けば、ライセン自身がそうと望まずとも、人はそのうち「変わる」。その存在が、気の源であるライセンに近づく。かつてライセンがそうだったように。
 ある意味望んでそうしたライセンとは違い、あの童女には龍の眷属になる気などさらさらあるまい。望まず知らずのうちに眷属となることは、理不尽以外の何者でもなかろう。
 あの童女は生きたかっただけだ。いつか人の世に戻りたいと願うこともあるやも知れない。
 その時には、人ならぬ身は童女にとっては桎梏となろう。
「――父上!」
 唐突に張りのある若い声が境内に響き、僅かな間己の考えの中に沈んでいたライセンは、声の方を見遣る。半歩先を歩いていたゼクウも同じようにして視線を巡らし、声の主を認めて破顔した。
「フガクか」
 丁度石段を上がってきた所なのか、丁度神域との境界辺りに、群青色の髪の青年が立っていた。かつては都を守護する英雄と呼ばれ、晩年まで生きたフガクだが、今は若い青年の姿をしている。生前は随分威厳のある振る舞いを身につけていたように思ったが、現世の肉体へ置いてきてしまったようで、今はすっかり見た目相応の様子である。
 その彼の背後から、少し遅れて姿を顕したのは、彼の兄であるウンリュウだ。薄藤色の髪を結わずに流した彼はこちらに気付くと、ご無沙汰しております、と一礼する。生き物というのは体を無くすと、大抵は死の瞬間か、或いは心身共に最も充実していた頃の姿を取ることが多いのだが、文武共に抜きんでて秀でていたが夭逝した彼は、この中で最も没したときの年齢と見た目が近い。
「人ならぬ身、か。……貴方の考えていることは解らぬでもないが、人ならぬ物には人ならぬなりに幸せがあるぞ」
 言ってゼクウは、彼の二人の息子、フガクとウンリュウがライセンに対して会釈するのを朗らかに見遣って、いつの間にか立ち止まっていた歩を踏み出す。
 見送りはここでいい、と言った彼が二人の息子達に迎えられて石段を下ってゆくのを、ライセンはその場で小さく頭を下げて見送った。
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2009/08/12
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