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2024/09/23
 酔月

 以前メモで呟いていた、神羅で平安妖怪ものパラレルをちょっと書いてみました。



 陰陽師サイガ様とか、その式のクオンさんとか。
 京の妖の王様のエドガさんとか。龍族と九尾の間の子のセツナさん(クオンさんと姉弟で相変わらずエドガさんの参謀)とか。
 龍神なライセン師匠とか。
 異国から渡ってきた鳥系妖怪のクラウディアさん(本国では失踪扱いで大騒ぎ)とか。
 同じく遙か昔に異国から渡ってきてライセン師匠に負けた(昔はもう少し血の気の多かったベリやんとかダメ、です、か)所為で帰れず、京に居着く羽目になってしまったベリやん(それなりに強力な存在なので、他に影響が出ないよう神域の結界内をふらふらと)は師匠と酒でも酌み交わせばいいとか。
 帝は女帝でテラス様。で、帝に対しても態度の大きなサイガ様とか。
 髭が居るとしたらやっぱり異国渡りの技術者かしらとか。
 あとクラウディアさんは大陸渡りの妖怪なのでてっきり姑獲鳥の類と思っていたら、実はもっと神話に近い火の鳥の一族の出で、どーすんの的なことになったり。


 そういう内容なので、あわないなぁと思った方は退避してくださいませ。

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 いっそ不吉なほど白い月が、皓々と境内を照らしていた。麓から神の座する社へと向かう階段の上から眺めれば、月光を反射する屋根瓦を並べた宮までがくっきりと見えるだろう。酷く空気の澄んだ夜だった。
 この時期にこんな月が出るのは珍しいが、この土地では年に何度かはあることだ。さほど驚くようなことでもない。
 かつては身を潜める闇のないこんな夜は異界の住処で大人しくしていたものだが、この神域に閉じこめられてからは、やたらと清浄な空気に毒されたのか、はたまた競う敵のいないに等しい(居るとすれば此処の主だ)場所にいる所為ですっかり平和ボケでもしたかと思いながら、ベリアールは目的もなく空を見上げた。
 その白い白い月を、ひらりと一瞬影が横切る。逆光になって見えない影の、けれど輪郭を視認したベリアールはわずかに眼を細めた。
 多少強面の彼がやると少し顰められた眉と相まって大層不機嫌そうに見えるのだが、梢の枝を少し軋ませて、降り立った枝に腕を絡めた影は、つやりと光る唇で円弧を描いて、甘い甘い声で囁いた。
「ただいま。久し振りね、ベリアール」
「……お帰り、とでも言えばいいのか?」
「会いたかった、って言ってくれたら嬉しいわ。それよりもしかしてご機嫌斜め?」
 そんな顔してたらそのうちおでこにまで皺が入っちゃうわよ、退廃的な色合いを含んだ甘い声で言って、アスタロットは槍のような形をした尾を揺らした。満月の夜、アスタロットの魔力は最も高まる。仕草も声も、人間の男を誘惑するには充分すぎる色香を伴っていた。けれど欠片の反省もないその声に、ベリアールは苦い声で答える。
「あまり出歩くな。お前の居所を訊かれると困る」
「だって、私はお外に行かないと食事も出来ないのよ?それともベリアールが食べさせてくれるのかしら?」
 悪戯っぽく首を傾げて、アスタロットは言う。もちろんベリアールが首を縦に振らないことをわかっての台詞だ。どう答えたものか逡巡した間に、既にアスタロットは背中の翼を広げて舞い上がっている。
「じゃあ、またね。外じゃないわよ、遊びに行くだけ」
「……シオンの所か」
 ベリアールは、あの濃い紫陽花のような色の髪をした少女を思い出す。どういうわけかこの夢魔は、あの龍神の眷属がお気に入りだ。
「そうよ、それに私ね、神様はあんまり好きじゃないの」
 くすりと笑って空へと舞い上がった影を視線で追ってから、ベリアールはゆっくり振り返る。アスタロットに言われるまでもなく、気付いてはいた。おそらく気付かせるつもりであったのだろう、清さと烈しさを兼ね備えた気配を隠しもせずに、龍神は立っていた。ベリアールとは違い、元から色の薄い髪が、月光の元では尚更白い。
 気付かれてしまったか。台詞とは裏腹に大して残念な様子もなく(もとよりこの龍神はあまり表情を出さないが)、ライセン、という名を持つこの神域の主は呟いた。
「……何の用だ」
「用がなければ己が土地を歩いてはならぬと言うか」
「貴様が用もなくわざわざここへ来るとも思えん」
「間借りの分際で主を貴様呼ばわりか」
「否定はしないが勝手な言い草だな。誰がここに閉じこめたと思っている」
「都の術者に滅せらるるよりかはましかと思うたが。……まあ良かろう、用ならば有る」
「ならばさっさとこなして戻ればいいだろう」
「そうはゆかぬ。そなたの顔を見に来たのでな」
 何を言っているのだと一瞬呆けたベリアールの目の前で、ライセンは今の今まで袖の陰に隠れていた酒瓶を掲げて見せた。あれは確か一昨日供物に上がっていたものだ。
「今宵は良い月だ。しかし一帯を治める身ともなればなかなか出歩けるものでもなし、一献どうか」
「…………」
 もし嫌だと言ったところで、おそらくベリアールが断り切れるわけはないのだ。何しろここはライセンの神域なのだから。
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2008/12/08
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