耐えられなかったのだ。
自分には手の届かない場所で、たった一人で彼が苦しむのが耐えられなかった。
何の力になれなくても側に居たかったし、居てほしかった。
何が彼を苦しめているのかは、解っていた。
見つめ合った彼の瞳が、薄く翳るのを知っていた。
もしこの手を放して済むのなら、そうしていたのかも知れない。
けれど、この抱いた手を放しても、互いの噂一つ聞こえなくなるほど離れても、彼はきっと同じように苦しみ続けるのだ。己の心に引き裂かれて。
――ならば、手放してはいけない。
決してどこにも、行かせてはいけない。
彼の目に映るすべての憂いから隔離して、それでもすでに根を張った苦しみが消えないことは百も承知だけれど、それでも。
自分には手の届かない場所で、たった一人で彼が苦しむのが耐えられなかった。
何の力になれなくても側に居たかったし、居てほしかった。
何が彼を苦しめているのかは、解っていた。
見つめ合った彼の瞳が、薄く翳るのを知っていた。
もしこの手を放して済むのなら、そうしていたのかも知れない。
けれど、この抱いた手を放しても、互いの噂一つ聞こえなくなるほど離れても、彼はきっと同じように苦しみ続けるのだ。己の心に引き裂かれて。
――ならば、手放してはいけない。
決してどこにも、行かせてはいけない。
彼の目に映るすべての憂いから隔離して、それでもすでに根を張った苦しみが消えないことは百も承知だけれど、それでも。
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( 2011/06/14)
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