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2024/09/23
 "Wait"

 今までにも、読みを誤ったとか、失策だっただとか、そんな風に思って後悔したことがなかったわけではない。国での立場を悪くしたのは仕掛け時を誤った所為だったし、このギルドに転がり込んだ当時は、何故寄りによってこんな口の達者な女の所へ、と己の選択を悔やんだ物だった。
 だがそれらはあくまで、吉と出るか凶と出るか不確実な選択だ。ならばたまたま凶を引き当てたのだと納得することも出来ようが、まさか純粋に良かれと思ってやったことを悔やむことがあろうとは思わなかった。
 目の前を塞ぐ白い装甲。
 じりじりとした気分で、ミュルメクスは確かめるように踏み出す。
 右に一歩。
 ウィ…ン。
 左に一歩。
 ウィ…ン。
「……おい」
 重々しい声を作るが、残念ながらこれは目の前の障害物にも、その向こうで作業に勤しむ背中にも通用しない。正確に言うと、後者は最近通用しにくくなった。それでも呼びかけには反応して、ランビリスは実に暢気そうな顔で振り向く。
「何なんだこいつは」
「ああ。ちょっと火薬使ってたから、そっから誰も近づけないようにって頼んだ」
「何もこんな仰々しいことをしなくても良いだろう」
「……いや、だって近付くな、って言うのを無視するのはお前くらいだろ?」
「私は犬猫か何かか」
「お前、待てが出来たのか」
「………………」
「そういうわけで、引き続き頼んだぞ、アクリス」
 ウィィン。
 金属の擦れる音とは違う、妙な音を立てながら姿勢を正すその様が、どことなく誇らしげに見えるのが尚更気に食わない。
 仕事を果たせるのがそんなに嬉しいか?
 ……嬉しい、のだろう。
 そう在ることが存在意義だと教えたのは、他ならぬミュルメクスだった。物だろうが人だろうが、理由のないものは憐れだ。だから動かして、動く理由を与えてやった。
 だからといって、小憎たらしいことに変わりはないが。この障害物め。起動させてやったのは誰だと思ってる。
 もっとも、そんな主張をしてみたところで、起動した人間と作った人間、どちらがより創造物にとって重要な存在かと言ったら、明らかに後者である。言うだけ無駄だ。
 複雑な面持ちで黙り込んでいると、ふと笑う声がした。
「悪かった、言い過ぎた」
 不意を突かれて瞬いていると、更に白い装甲の影から声がする。
「こっちの仕事はもうすぐ終わる。そしたら話し相手になるくらいはしてやるから。機嫌直せよ」
 機嫌を損ねて黙っていたわけではないのだが。ないのだが、最近はそんな緩い約束一つで、困ったことに、反論も不満もゆるゆると輪郭を失って溶けていってしまうのだ。
「……わかった」
 そう応じて、部屋の隅に一つだけ置いてあった椅子に腰掛ける。
 恋は盲目だなどと、何処の詩人の戯れ言かと思っていたが、なるほど確かに。
 躊躇うランビリスの代わりに電源を入れたのも、命を与えたのも、ランビリスを最も優先するよう言い聞かせたのも自分だ。けれどついさっき、ほんの一欠片ほどではあるが、ミュルメクスは確かに、『しなければ良かった』と思ったのだ。電源を入れなければ、命など与えず木偶のままにしておけば、誰の命令でも平等に聞くようにすれば――もちろんそんな考えは間違っていて、一時の情動に流された気の迷いでしかない。
 それを理解しているから、ミュルメクスは気付かれないよう息を吐いた。
 この感情は判断力を鈍らせる。そのうち何一つ正しいこともわからなくなって、狂ってしまうのかも知れない。
 けれど多分、その時にはもうそれすらも幸福なのだ。

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 アンドロのサブクラスを決めたときから書きたかった話。
 アンドロに邪魔されてギリギリするプリと、お仕事頑張ってます、エッヘン! っていうアンドロです。
 前回のネタと言い、うちのアンドロは色々と、とぼけすぎである。

 うっすら時系列に矛盾が生じる気がするので、後でちょっとメモ見直そう……
 バリはだいぶ黒プリの言動を……というか扱い方を心得てきてます。軽口も叩く。でもまだくっついてない。
 どちらかというと子供扱い気味ですよね。まあ黒プリがあんな人なので、「駄目だこいつ早く何とかしないと」みたいな面倒見なくちゃみたいな気分がちょっとあって、その所為で子供扱い気味なのかも知れない。

 プリの方は後半うっすらヤンデレの気が出てる気がしますが。別に何かのフラグではありません。念のため。
 ……でもこの人は狂うと言うよりは、自制を放り投げる人だろうなー。
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2010/06/23
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